禁則破りの臨界温度 7
旅館に戻った頃にはもう夜になっていた。夕食が出ていて俺たちはそれを食べている。百合姉と理子姉はお酒を飲んでいた。
「ねぇ、王様ゲームって知ってるかな?」
「王様ゲーム?」
理子姉は五枚の紙を取り出し、それに一から五までの番号を書く。そして見えないように縦に折った後、それらの順番を入れ替えた。
「一番を引いた人が、好きな番号の人に自由に命令できるの」
「何だそれ」
「やると面白いよ」
何だか、危険な予感がするんだがな。
紙を交換した結果、俺に回ってきたのは二番。
「王様だーれだ?」
「……私」
王様になったのは美香姉だった。美香姉は少し考えた後、こう言った。
「二番が、三番の肩を揉む」
二番って俺のことかよ。
で、三番は誰かというと……
「二番は俺だが」
「え、しょ、将君が二番?」
三番は理子姉だった。
とりあえず理子姉の後ろに座り、理子姉の肩を揉んであげた。
理子姉は顔を赤くし、そのままうにゅーとふらふらになる。
「……次」
紙を回収し、また順番を変えた後渡した。
今度は……四番だ。
「王様だーれだ?」
「私だ!」
愛理姉だった。愛理姉はこれまたうーんと考え、思いついたかのように言う。
「三番と五番が、お互いをなでなでしあう!」
三番は美香姉、五番は理子姉だった。
お互い少し恥ずかしそうにしながらも、お互いの頭をなでなでする。
再び紙を回収した後、順番を変えて渡した。
俺は……また二番だ。
「王様だーれだ?」
「私だね」
理子姉だった。
理子姉は意味深な微笑みをした後、こう言う。
「四番と五番が、昨日やっていた恋愛ドラマの再現をする!」
「えっ」
「嘘」
愛理姉と百合姉が絶句した。
昨日の恋愛ドラマか……あまり見て無いから思い出せ……あ。
「理子姉、それはレベルが高いんじゃ」
「出来るわよ。私だって見て三分後に出来るわ」
いや、それは理子姉の演技力が凄いからだと……
にしても、昨日の恋愛ドラマはドロドロとしていたような気がするんだが。
「じゃあ、やってもらうね」
「愛理……いいわよね?」
「うん……」
二人とも顔をほんのりと赤くしながら、抱き合った。
百合姉が愛理姉を押し倒し、二人の顔がギリギリまで近くなる。
……見える。お花畑が見えるぞ!
「愛理……」
「百合姉……」
「そろそろやめていいよ」
理子姉は言ったが、二人はまだその体勢のままだった。
それどころか、百合姉の手が愛理姉の服の中に。
おい、あれ完全にスイッチ入ったぞおい。どうするんだよ理子姉。
「理子姉、スイッチが入っちまってるぞ」
「ありゃま」
「……もう」
俺は見てはいけないと思いつつも、目を背ける事が出来なかった。
百合姉の吐息が愛理姉の頬に当たるのが、何故か見るだけで分かる。
二人とも、異様に興奮しているのだ。
「百合姉、みんなが見てる……」
「いいのよ。愛理」
愛理姉は恥ずかしさのあまり、顔を赤くして涙を一筋流した。
百合姉はそれを見て更に興奮したのか、手を奥まで突っ込む。
見ている俺も、背中に汗を流しているのが分かった。
「愛理……大好き」
「私も。百合姉……」
理子姉と美香姉と俺は、呆然とその様子を眺めていた。
昨日の恋愛ドラマ、そのまんまじゃねぇかよ。
……ちょっと待て。あれって確かあの後……
「もう、我慢できないの……」
「私もよ」
百合姉が、愛理姉の服を脱がせ始めた。
愛理姉の下着が見え……ていない内に俺は後ろを向く。
だめだ。絶対にそれを見てはいけない。多分。
「……」
俺は無言で立ち去り、部屋から出た。