禁則破りの臨界温度 3
どうしてこうなった。
百合姉がコントローラー持ってる後ろから、俺が手を回している。
何故、こんなに密着する必要があるんだ?
「将。ちゃんと教えてね?」
「はいはい」
百合姉の横に顔を出し、テレビ画面を凝視する。
百合姉の香りが鼻を突き、頭の中がお花畑寸前になった。
まずい。理性を保たなければ。
万が一百合姉を押し倒しでもしたら……人生のEXIT行きだ。
「始まったわ」
スタートの音と共に、ぷよが上から降ってきた。
「緑を左にして、一番左端に横向きで」
俺が操作を教える係になったが、その頭を百合姉の身体が狂わせる。
すぐ目の前に、百合姉の背中が。首が、髪の毛が。
「き、黄色を上にして一番右にっ」
「どうしたの、将? 息が荒いわよ?」
百合姉のせいだっつの。それ位分かってくれぇ。
そしてコントローラーをたまにいじる関係上、腕が百合姉の前に。
上腕二頭筋に、百合姉の、む、むむ、む、む、むむむ、胸がっ。
「早く指示しなさい」
「あ、あ、ああ、青を下にして左から三番目」
無理だ。
こんな状態で、正確な判断が出せるはずがない!
一方、2Pの理子姉は百合姉に何か嫉妬が含んだ目を向けながらやっている。
画面を見れば、理子姉の方が有利だ。
「ほら、来たわよ?」
「たっ、縦にしてみ、右から二番目」
「将、やって?」
コントローラの主導権が百合姉から俺に渡った。
俺はコントローラーを操り、画面を凝視する。
だが。
「ひゃっ……そんな所触らないでぇ。将」
腕が、百合姉の胸に、ふにっ、ふにっ。
張り詰めていた集中力が、一度にぶつんと切れた。
青ぷよを上にするべきところで下にしてしまい、一気に劣勢に。
「やったぁ。5連鎖」
隣の理子姉は嬉しそうに言う。
おじゃまぷよが降って来て、準備中を見事に襲った。
埋まる。
「……」
ガシャーン。
百合姉は振り向いて、俺に言った。
「責任、取るわよね?」
百合姉が俺を地面に倒し、その上にまたがる。
……っておい! 責任ってなんだ!
「いや、百合姉の」
「私の、何?」
百合姉の顔が、俺の顔から10センチの所に。
む、胸がなんて、口が裂けても言える訳が無いだろ……
どーすりゃいいんだよ。この状況。
「ひょっとして、ここ?」
百合姉は自分の服の胸元を掴んで、谷間を強調するがごとく引っ張った。
俺は視線を避難させて、何とか自分の理性をギリギリで保つ。
その瞬間、フライパンが飛んで来た。
百合姉は左ひじでそれを弾き返し、飛んで来た方向を見る。
「お姉ちゃん……いい加減にして」
愛理姉だった。ってフライパンあったんだっけか確か。
あ、いや、その、ちょっと、愛理姉? どす黒いオーラが、その……
「将君は私の物よ!」
「将は私が食べるの。愛理は見てなさい?」
「嫌!」
……まずい。どうすりゃいいんだ。
「二人とも、続きは風呂場でしましょう?」
間に、理子姉が入った。
そういえば、温泉に来て温泉に行かないのもおかしな話だったな。
「……そうする。理子姉」
「向こうで勝負しましょう? 将の鼻血をどっちが出させるか」
……嫌な予感だなぁ。あはは。
俺、一体どんなリアクションを取ったらいいのでしょうか、はい。