看病する姉 3(終)
風邪で寝込んでいる俺の隣で理子姉が倒れているという変な事態になった。
おかげでベッドは狭く、熱を出した俺にとっては何か辛い。
「……」
理子姉の手に触れる度、下がりかけた熱が再び上昇してしまう。
だが一向に理子姉が目を覚ます気配はなく、それどころか。
「むーっ」
理子姉は変な寝言を言いながら俺の腕を強く抱きしめてきた。
寝ようと思ったが余計に寝られず、俺は素数を数え始める。
157くらいの時、理子姉が目を覚ました。
「……ふぇっ!?」
「あ」
理子姉はその場でびくっとなり、その後、がくがくと震えだした。
俺の腕をさらに強く抱きしめ、こっちの方をじっと見つめてくる。
「将君……何だか、ちょっと前の出来事思い出すね」
「ちょっと前?」
「旅館から帰ってきた日の事」
理子姉は、今度は俺の身体自体を抱きしめてきた。
理子姉の首筋からいい匂いが漂ってくる。
「……将君の身体、力強いね」
「そうか?」
「だって、この身体で捕まえられちゃったら、私……」
理子姉は頬を赤く染めた。
「逃げられない……じゃん」
「……逃げる気もないんだろ」
俺は理子姉の腰に手を回し、逃げられないように強く抱きしめた。
理子姉は半ば涙目になりながらも俺と抱き合っていた。
「……キス、したい」
「理子姉、それは……」
「いいの」
風邪がうつるとかいろいろ言い訳を考えたが、口から出せなかった。
今の俺には、理子姉からのお願いが断れない。
「でも、キスって……」
「分かってるよ。やっちゃだめなのは分かってる」
理子姉はさらに俺を強く抱きしめた。
身体中から、理子姉の愛情を感じる。それも、物凄い量。
「将君から、来て」
「理子姉……」
理子姉は俺を起こすと、ちょうど俺の下に寝そべった。
もはや理性など働くはずが無かった。
俺の身体は本能の赴くままに動き、目の前にいる女性へ――
「将。起きなさい」
目を覚ますと、そこには百合姉がいた。
俺は横から理子姉に抱きつかれていて、百合姉はそれを微笑ましい顔で見ている。
「……おはよう」
「体調は良くなったかしら?」
「まあまあな」
そんな感じに話していると、俺の部屋に、帰ってきたばかりの愛理姉が入ってきた。
「あー、理子姉が将君独り占めしちゃってる!」
「愛理。理子はずっと将の面倒見てたのよ」
「私も面倒見たかった!」
愛理姉は半ばふてくされたようだが、俺の方へやってきて笑顔になった。
「大分良くなったみたいだね。安心したよ」
「美香姉は?」
「理子姉のアルバム買いに行っちゃった」
あ、そっか。今日はアルバム発売日か。
ショッピングセンターのライブで聞いた新曲が入ってるあれの。
「むにゃ……将君……」
不意に、理子姉が寝言でそう漏らした。
3回で終わったの久しぶりだな。




