コスプレイヤーな姉 1
俺と愛理姉が秋葉原に遊びに行った時の事であった。
「あ、メイドさんだ!」
愛理姉が俺の腕を掴みながら向こうの方に指をさした。
愛理姉が指さした方にはメイド喫茶があり、その前ではメイドさんが歩行者にチラシを配っている。
白いヘッドドレスに、前掛け。愛理姉の目はそれらに釘付けだ。
「どうしたんだ? 愛理姉」
「……」
愛理姉はしばらくメイドさんを凝視した後、俺の方を向いて言った。
「私、メイドさんになる!」
「……で、買った訳なのか?」
「うん。百合姉に通販で頼んでもらったよ」
玄関にて、愛理姉はダンボールの中からメイド服を取り出した。
白エプロンとか、ヘッドドレスとか、前掛けとか、どんだけあるんだこれ。
「ちょっと着替えてくるね!」
「あ……」
愛理姉は段ボール箱をかつぐと、そのまま自分の部屋に行ってしまった。
すると、百合姉の部屋から百合姉が出て来る。
「愛理、大分はりきってるわね」
「メイドさんになるって言ってるからな……」
百合姉はくすっとその場で笑う。
「愛理ならいいメイドになれるわ。将に向かってご主人様、て言うかもよ?」
「ぶごっ」
その場でフラっとしてしまった俺を見て、百合姉は目を細めた。
愛理姉がご主人様って、ちょ、それはやめろ、いろんな意味で。
「ご主人様と言っても、愛理に変な調教はしちゃダメ。分かった?」
「する訳ないだろおい」
それやってたの誰でしたっけ。
愛理姉の姿を見たら最悪失神するからな……部屋に戻るか。
俺の部屋に入り、ベッドの上に倒れこんだ。
最近いろんな事がありすぎて、ごちゃごちゃしているのだ。
「……理子姉もどうして」
数日前に理子姉と寝た時の事を思い出し、俺はその場でハッとする。
あの時の理子姉は、いつも以上に艶かしくて、大人の女性だった。
……理子姉も緊張、していたのかな。
「考えても仕方ないんだけどな」
目をつむっても、すぐ隣に理子姉を感じられるくらい根強く残っている。
理子姉には、何をやってもかなわない。
そう思っていた時、ドアががちゃりと開いた。
「ご主人様……大丈夫ですか?」
そこには、メイド服姿の愛理姉が立っていたのだ。
茶色っぽい髪は結ばれており、ヘッドドレスはそれによく映えている。
ちょっと胸元。自重しなさい自重。
おかげで色気が半端ない。理性が持たんぞこれ。
俺は思わず目をそむけ、その場で睡眠作業へとシフトチェンジする。
「様子が変ですよ?」
「……」
俺は寝るんだ。眠りにつくんだ。
だが、そんな俺を妨害するかのごとく愛理姉の姿が脳裏から離れない。
そして、俺の理性が粉々に砕け散る出来事が起きてしまった。
「……よいしょ」
愛理姉が、俺のベッドに入ってきたのだ。
メイド服ごしに愛理姉の身体が触れてきて、俺の理性はアセンションした。
何故かむくっと愛理姉の方を向いてしまい、そのまま抱きしめてしまう。
「ご、ご主人様……!?」
「……愛理姉ぇ」
愛理姉の甘い匂いがこちらへと漂ってくる。
それに負けてしまい、俺は愛理姉の胸元に顔をばふっとうずめた。
「将君、それはダメ……」
「ご主人様」
「……ご主人様、それはダメです」
ダメだ。理性が戻ってきてくれない。
それどころか、理性がさらに向こう側へ走っていってしまった。
「はうっ……!」
「愛理姉、可愛い」
「そんな……ご主人様……!」