ポニーテールな姉 3(終)
「失変カフェ」とのコラボシーン。前に引き続き結構長め。
光一さん、どうもありがとうございました。
ライブ終了後、俺たちは理子姉を迎えに行った。
理子姉は楽屋の中で、自分のポニーテールを鏡で見ていた。
「理子姉! 可愛かったよ!」
「ふえぇっ!?」
いきなり入ってこられた理子姉は驚いて、その場で顔を真っ赤にした。
その反応も可愛すぎて、俺は目をそらしてしまう。
「あれ、みんなポニーテールなの?」
「うん!」
俺の目の前に、ポニーテールの人が三人いた。
ひょこひょこした可愛いポニテの愛理姉。
さらさらと流れるような、大人のポニテの百合姉。
どちらの要素もある、まだ大人になりきれてないポニテの理子姉。
俺と美香姉はそれを見ながら、にっこりと微笑んでいた。
「あ、そういえばさ。どこかで休まない?」
俺は理子姉に聞く。
「場所は?」
「失変カフェ、ていう所。一度行ってみたいと思ってたんだ」
「いらっしゃいませ!」
明るいポニテのウェイトレスが出迎えてくれた。
……胸、でかいな。百合姉と良い勝負か。
「入るわよ」
席に着いたところで、理子姉はチーズケーキを注文した。
しかし、このカフェの中ポニテ率が高いな。
円いテーブルの周りに俺たちは座りながら、外の風景を眺めていた。
数分後、チーズケーキが1ホールやってくる。
「お待たせしました。マスターからのサービスです」
「ありがとう。マスターにお礼を言っておいてね」
「はい」
ウェイトレスさんは……鳴島綾香さん、て言うんだ。
そういえば百合姉もカフェを経営してたよな。
「あ、ここのチーズケーキおいしい!」
理子姉はチーズケーキをほおばりながらそう叫んだ。
俺もチーズケーキを口にほおばる。
「おっ、本当だ」
絶妙なチーズの味が口の中に広がり、糖分が切れてた頭が再稼動する。
だがしかし。
「鉄建制裁!」
さっきのウェイトレスの声と共に、一人の男性が吹っ飛ばされてきた。
目の前を通過していき、店の壁に思い切り背中をぶつけている。
「あ、綾香君。今お客さん来てるよ」
「マスターが悪いんじゃないですかぁ」
これを普通に見ていられる俺はどうなのだろうか。
百合姉と愛理姉の殺し合い寸前の喧嘩は凄かったけどな。
「申し訳ございません」
「大丈夫ですよ。ケーキもおいしいし」
「ありがとうございます」
飛ばされた人はマスターだろうか。
マスターらしき人は立ち上がった後言った。というより立ち上がれるのか。
「マスターの光一です。さっきはすいません」
「大丈夫です。俺は家でこれ以上を見たことがありますから」
「あ、そうなんですか?」
光一さんの目が、美香姉の手元で留まった。
チーズケーキに、大量の……砂糖。
いや、チーズケーキって最初から白いものだったっけ?
「かけすぎなんじゃ……」
「……普通」
光一さんと鳴島さんはそれを見て、呆然としていた。
俺も最初はそうだったな。今となってはもはや慣れてしまったのだが。
にしても、やはりポニテ率が高い。
「ポニテ率高いですね」
「あー、そうだね」
その時、店の奥からもう一人の女性が出てきた。
見た目からして……鳴島さんの妹さんなのかな?
「どうしたんですか? なかなか戻ってきませんから心配しましたよ?」
「あ、清香君。今お客さんとお話をしててね」
清香さん、と言う人か。なるほど。
愛理姉と百合姉はチーズケーキをむしゃむしゃと。
理子姉ががつがつと食べまくっていた。ってチーズケーキ半分消えたぞ。
「お客様、ご姉弟なんですか?」
「うん。弟は自慢出来るよ!」
愛理姉はそう言うと、チーズケーキをフォークで持ち、こちらに向けた。
「ほら、あーん?」
「いや、それはちょっと」
「そのポジションを私n」
そう言おうとした光一さんが、また鳴島さんに吹き飛ばされた。
「大丈夫なんですか?」
「いつもの事です」
鳴島さんは笑顔で言い切った。……怖いな。
「もう。マスターったら。巨乳で可愛いポニテの女の子が来たからってそんなにはしゃがなくても良いじゃないですか」
鳴島さんはそう言った。
その瞬間、美香姉の目の色が一気に変わる。
あれ、何か気に触る事……あ。
「……板で悪かったね」
美香姉の声が、二音くらい下がった。
どす黒いオーラが身体中から発せられ、美香姉は近くの椅子を片手で持ち上げる。
「美香姉、鳴島さんたちは悪くない!」
「ほえ? 私、何か言いました?」
「……」
俺は鳴島さんの前に立った。
その瞬間椅子が振り下ろされ、俺の出した腕に思い切りたたきつけられる。
「いてぇ……っ」
「将君!」
愛理姉が俺の所に駆け寄る。
美香姉は自分のやった事の重大さに気づいたらしく、正気を取り戻した。
「……将、ごめん」
「大丈夫だ、問題ない……」
そして、清香さんはそれを見た後に言った。
「お姉ちゃん。後で店の裏に来てくれない?」
「え? ……あっ」
「やっぱ今すぐ来て?」
「ほえぇぇぇぇ!」
鳴島さんは、清香さんに引っ張られていってしまった。
光一さんは俺たちの様子を見ながらつぶやく。
「やっぱ平和が一番だね」
「そうですね。俺もそう思います」
美香姉は申し訳なさそうな顔をしていた。
理子姉は俺の左腕を取り、レジの所へ向かう。
「ありがとう。おいしかった」
「こちらこそありがとうございます」
お釣りを受け取った理子姉は俺の腕を思い切り抱いた。
光一さんは何だかうらやましそうな顔である。
「お姉さん一人くれませんか?」
俺は笑顔で即答した。
「無理です」
家に帰った後は覚えていない。
あるとしたら、夜に理子姉が部屋に入ってきた事。
ポニーテールではなくなっていたが、理子姉が美しい事は変わらなかった。
「一緒に寝よう? 将君」
「……ああ」
理子姉は俺の右腕に抱きつきながら眠りに付く。
俺は高まる鼓動を抑えながら、眠りに付く方法を考えていた。
「私のカフェでチーズケーキ作ろー」
深夜、百合姉の嬉しそうな声が聞こえてくる。
この後に第2.5期の「禁則破りの臨界温度」が入ります。