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不安な姉 3(終)
「将君、何やってたの?」
「自分の部屋で寝てた。ちょっとご飯は食べれる気がしなくてな」
朝ごはん、愛理姉と百合姉を久しぶりに見た。まぁ一晩程度だけど。
俺は美香姉の事にはあえて触れず、適当にごまかした。
「そう言えば将。理子のライブがまたあるらしいわよ」
「ライブ? どこでだ?」
百合姉は少し時間が経った後、思い出したかのように言う。
「宮城スタジアム。行くかしら?」
俺は即答していた。
「行く」
隣にちょこんと座っている美香姉も微笑んでうなずいた。
いつもの朝食よりも、美香姉は俺と距離が近い気がする。
心の距離も縮まれば良いな。
「あれ、美香ちゃん。何か昨日と比べて楽しそうだよ?」
「……何でもない」
美香姉は無表情なことが多い。
だが、この時の美香姉は太陽のように輝く笑顔だった。
健一が見たら発狂するようなレベルの笑顔である。
「じゃあ、チケットは取っておくわね」
「頼むよ」
理子姉のライブにまた行くのか。楽しみだな。