病気な姉 3
いろんな事があり、弁当の時間。
俺と美香姉は屋上まで来ていた。
「……静かだな」
「うん」
風の音が聞こえる。
愛理姉がいないと、こんなに静かだったんだ。
俺と美香姉は景色がよく見える所に座り、弁当を広げた。
中には、美香姉の大好きな甘い玉子焼き、俺の大好きなフライドポテトが。
「愛理姉……」
頑張って作ってくれたんだな。愛理姉。
俺は微笑むと、フライドポテトを口の中にほうった。
愛理姉の作った味が口の中に広がる。
「……お姉ちゃん」
美香姉が、突然つぶやいた。
その目には、涙が浮かんでいる。
「ありがとう」
「……」
俺は何も見なかった振りをして、フライドポテトを再度口にほうった。
具合が悪くても、作ってくれたんだな。
下校途中、CDショップに寄った。
「美香姉、何買うんだ?」
「……これ」
美香姉が見ていた物は、理子姉の新しいアルバムだった。
名前は「癒しの雨」。優しい歌がたくさん詰まったアルバムだ。
美香姉はにっこりと笑いながら、それをレジまで持って行く。
「……姉さん想いか」
理子姉。頑張れよ。
家に戻っても、とても静かだった。
俺と美香姉は顔を見合わせ、居間をのぞく。
「……」
「……」
愛理姉と百合姉が、仲良く寝転んでいた。
二人とも仲良く、同じ布団ですーすーと寝息を立てている。
……うーん。
「美香姉。夜ご飯……あれ?」
美香姉の姿はなかった。
俺は辺りを探すが、美香姉はどこかに行ってしまったらしい。
「……」
愛理姉が寝返りを打ち、百合姉の胸に顔をうずめた。
百合姉は愛理姉を包むかのように腕を出して寝ている。
……うーん。
「……」
愛理姉と百合姉が起きそうだったから、俺は一応部屋から出た。
こっそりと部屋をのぞくと、百合姉と愛理姉は抱き合いながら眠っている。
あの間に……いや、なんでもない。
「お姉ちゃん……」
「愛理……」
どちらも寝ぼけているのだろうか。
うーん、その……別に構わないんだけど……うーん。
「……うん?」
百合姉が目を覚ました。
愛理姉もそれにつられて目を覚ます。
「……」
「……」
次の瞬間、百合姉と愛理姉は顔を真っ赤にした。
流石姉妹。恐ろしいほどタイミングがぴったりだ。
急いで距離をとった二人は息を荒げつつ、状況をまとめる。
「ご、ごめん……百合姉」
「こっちこそ、何か、ごめん」
気まずそうに顔を背けている二人は、なんだか可愛く見えた。
……そうだ。お菓子を買ってきたんだった。
俺は何も見なかった振りをして、買い物袋の中にあるお菓子を持って入った。
「おーい。買ってきたぞー」
二人はびくっとしながらも、俺が持って来た袋を笑顔で受け取る。
「ありがとね。将」
「流石将君だね」
二人は買い物袋の中にあるお菓子を見た。
その瞬間、二人の顔が蒸発しそうになるほど真っ赤に染まる。
……? 変なものでも買ったっけ?
「あ、ありがとね」
「ごめんね、迷惑かけちゃって」
俺は何だか重苦しい雰囲気を感じ、部屋から出た。
何を買ったっけか……ポッキーだったような気がするが。