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白金家の日記 -お姉ちゃんたちとのハーレム生活-  作者: 白金 将
第12期 あまあまポートフォリオ
350/375

場所取りの姉 3

 日が昇って暖かくなってくると人の数も増え始め、早い所ではもうお花見をしている集団が見られるようになってきた。公園近くの広場ではいよいよ屋台の営業も始まり、桜の下からの賑やかな喧噪も遠くから聞こえ始める。姉さんたちは来るのにもう少しだけ時間がかかるらしい。

 それまでの間、俺と美香姉はあらかじめ買っていたお菓子でも広げながらごろごろと転がってゲームに勤しむ。美香姉のスマホの画面を覗くとペンギンがいっぱい島の中を走り回っていた。


「んーっ……」


 気持ちよさそうな声を上げながら美香姉がブルーシートの上でうつ伏せになる。一応機能一緒に寝ていた身とは言え、ぽかぽかと暖かい日差しのせいでこちらもなんだか眠くなってきてしまった。

 何もしたくない。遠くから人の声も聞こえてくるけれど、美香姉とこうしてごろごろしている時間は何にも代えがたい……




 ……また夢を見ているようだった。

 どうやら自分は檻の中で眠っているらしく、それを織の外から見てる人たちがいる。今回は動物園の檻の中の動物になったようだ。ふと横を見ればそこでは美香姉も横になっていてすやすやと寝入っている。

 よく見れば美香姉の頭には獣の耳としっぽがちょこんと生えていた。かわいい。


『ねーねー、ミカちゃんずっと寝ているよ』

『ほんとうだ。確かにいつも寝てるって書いてあるね』


 檻の外からは勝手なことをいう人間サマたちの声が聞こえてくる。ふむ、ここはひとつサービスでもしてあげようか。そんな獣的思考を巡らせながら美香姉の所へ四つん這いで進んで顔の辺りをつついた。

 程なくして美香姉はごろりと転がって目を覚ます。お腹を見せるような彼女と目が合った。


「ん……将?」

「美香姉が寝てるばかりで外の人がつまらなさそうにしてる」

「別にいいじゃん……んーっ」


 頑張って起こそうとしていたら美香姉は四つん這いになるように体を起こし、そのままこちらを押し倒すようにして全体重をかけてくる。彼女の下敷きになった俺はただただ美香姉の暖かさを感じていることしかできない。


『わーっ、二匹とも仲良いんだね』

『姉弟だって。ミカちゃんの方がお姉ちゃんなんだ』

『にしてもちょっと距離近くない? やっぱり動物って人間と違うんだね』

「動物、だって……えへへ♡」


 外の人たちの声を聞いた美香姉はニヤニヤ笑いながら至近距離でこちらを覗いてきた。うん、確かに、俺と美香姉がやってることは人間より動物に近いことなのかも……

 カシャリ、カシャリ、とシャッターを切る音を聞きながら、美香姉は外の人に見せつけるように唇を重ねてきた。どよめきが走る。


『えっ、あの二匹、姉弟なのにキスしちゃってる!』

『わーっ、見ちゃっていいのかな……』

『動画撮って上げたらバズるでしょ、姉弟同士でキスしてるって』

「み、美香姉っ」

「別にいーの」


 ちゅ、ちゅっ……と啄むようにキスを続ける。美香姉のしっぽもご機嫌に揺れる。

 身体を密着させ、恋人同士の距離で恋人がするようなことをする……


「将、好き……♡」

「うん、俺も好き……」

『わ、あれ、求愛の時の声だよ』

『姉弟同士で求愛なんて!』

『おかーさん、あれなにしてるの……?』

「動物だから、好きでもいーの……♡」


 息がしんどくなるくらいに美香姉のことが好きでたまらない。どく、どく、と心臓が脈打って彼女が壊れるまで抱きしめたくなる。そう、今のように外からたくさんの人が見ていたとしても。

 美香姉も開き直ったようだった。他の人に見せつけるのがあまりに楽しいらしい。あまりに密着していたせいか姉さんの心臓の鼓動がはっきりと分かる。


「美香姉」

「ん」

「気持ちいい?」

「ん……♡」


 手足をぎちぎちに絡めてフーフーと切ない息を漏らす美香姉。他人からどう見られているかも気にせず二人でしたいように愛を確かめ合う。そんなとろけるようなひと時を送っていると、急に視界が白くぼやけてきて……




 ……気が付けば、横になって眠っている俺と美香姉を、愛理姉がしゃがんだ姿勢で見下ろしていた。ふわふわした春の装いを身に纏った愛理姉は今日も可愛い。


「あ、起きた」

「んん……あれ、みんな来た?」

「うん。理子姉は今千秋さんたちを迎えに行ってる。百合姉は写真撮ってるよ」

「美香姉、ほら、姉さんたち来たよ」

「ん……」


 寝ぼけた様子の美香姉は俺の背中にもたれかかるようにして身体を起こす。

 周りのシートでは既に多くの団体が宴会を始めていた。遠くのステージでは街の幼稚園児たちがお遊戯を披露しているらしく、公園全体がお花見ムードに包まれている。


「大丈夫だよ、将君と美香ちゃんのお弁当もあるから」

「あー、あれは……」

「んーっ」

「おうちに帰ったらいっぱいぎゅーってしようね」

「はい……」


 愛理姉の無邪気な微笑みがなんだか怖い。帰った後のことを憂いながらくつろいでいた場所を美香姉と一緒に整理し、姉さんたちが来ても問題なく座れるよう場所を作り始めたのだった。

 そうしていると他の姉さんたちも揃い始める。


「お疲れ様、二人とも。昨晩は寒くなかったかしら」

「毛布があったから大丈夫だったよ。百合姉もお疲れ」

「やほー! みんな連れてきたよ!」

「あ、理子姉。千秋さんたちも」

「よう、料理沢山持ってきたぞ」

「お久しぶりです皆さん」

「えへへ、みんなでお花見……」


 全員揃ったところで自分たちもお花見が始まった。愛理姉、千秋さんが持ってきた弁当箱を開けるとそこには色とりどりのおかずが入っている。愛理姉の持ってきたものには写真で見た通りの唐揚げ、エビフライ、玉子焼きと俺や美香姉が大好きなものが詰まっていて、千秋さんが持ってきたものには一口サンドイッチやおにぎりといったものが盛り沢山だ。


「わ、千秋、今回ちょっとかわいい方に寄せてきた?」

「んなこと言うなよ、揚げ物はお前ん家の三女に任せてたから、な?」

「任されてましたっ」

「将さんと美香さんも場所取りおつかれさまでした」

「そう言えばそうでしたね……!」

「や、そこまで大変じゃなかったですよ」

「うん……」

「あら、すっかり猫被っちゃって」


 美香姉は今はうすぼんやりしている様子けれど腹の中でくすくす笑っているのが俺にはわかってしまっていた。他の姉さんたちに分からない心のコンタクトで俺もにやにやさせてもらう。


(ちょっと頭痛い……)

(美香姉、それ多分寝過ぎだって。水飲んで)

(うん)


 お花見は始まったばかり。まだ正午にもなっていないのだ。姉さんたち全員で集まったこの会は楽しいものになりそうで、夜通し場所取りしながら待った甲斐がある。

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