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修道女の姉友 3(終)

 このゲームにおける「修道女」は戦闘からかけ離れた存在に思えるかもしれないが、実際のところは戦闘におけるエキスパートであることが求められる。というのも、攻撃手段を持たない以上は強力なモンスターがいる場所を避けて行動したりアイテムを活用して撒いたりする必要があり、そのためにはやはり一通り戦い抜いている事が肝要となるのだ。

 戦いを捨てているだけあって、その祈りの力は絶大。辺り一帯の冒険者に等しくバフ(能力上昇効果)を与えることができる修道女はイベントなどの場では引っ張りだこなのである。そんな職業だったはずなのだが……


「ううっ、またあそこに何かいます……」

「あれは避けて行きます。こっちです」


 彼女の経験不足もあって、ここは「勇者」である俺が彼女の先導を任されていたのだった。二人で「滅びの原野」を歩きながら希さんの最終目的地である「天使の降りた場所」を目指していると、様々なモンスターとの遭遇を経た末にそれっぽい場所を見つける。

 原野の中、ぽつりと石の階段が作られていた。しかしそれは途中で崩れ落ちて瓦礫になっている。


「あれっぽいですね」

「そこです……!」


 何かモンスターがいるかもしれないと注意しながら進むが近くには何もいないようだった。階段付近に辿り着くと希さんはその一番下の段近くで片膝をついて祈りの体勢に入る。周囲にモンスターがいないか見回していると原野に一陣の風が吹いた。ふと彼女の方を向くと、崩れかかった階段を中心として渦を巻くように草木が揺れ動いている。

 モンスターの攻撃で作られる激しい風ではない。吹かれているとどこか安心できる、温かみすらも感じられるものだった。ステータスを見ると「祈り Lv3」とプラスの状態変化が書かれている。


「終わりました。どうでしたか?」

「かなりステータスが上がってます。凄いですね……!」

「えへへ……」

「それじゃあ戻りますか」

「あ、あの」


 希さんは近くまで寄ってくると少し恥ずかしそうに俯く。その後、胸元で両手をいじりながら細々とした声で喋った。


「頑張ったので、ご褒美……くれますか?」

「ご褒美?」


 彼女の言葉を聞いて俺は少し考える。そして、彼女にゲームからログアウトするように伝えて自分も現実世界に戻ってきた。希さんはちょっと恥ずかしそうな様子で上目になってこちらを見て何かを期待してくる。


「……うーん、ご褒美って言っても、希さんは祈っただけじゃないですか」

「えっ」

「戦っていた時もダメージ受けて喜んでましたよね?」

「そ、それは……」


 もじ、もじもじ。

 頬を赤くした希さんは当時のことを思い出したのか内股気味になる。


「ご褒美って言うか、欲しいのはこっちの方なんですよね。誠意を見せて欲しいっていうか」

「せ、誠意……♡」

「希さんはそういうの好きでしたし、お互いwin-winでいいじゃないですか」

「はううっ」


 彼女はしばらく考え込んだと、自分の服の裾に手を掛けてちらとこちらを見てくる。何も反応せずに見つめ返すと希さんは僅かに口を開いて息をしながら服を脱ぎ始めた。布擦れの音と共に滑らかな素肌が現れ、淡い黄色の下着も顔を出す。

 無言で、それでも恥ずかしそうに彼女は脱ぎ続け、ついに下着のみの姿になった。そしてそのまま膝を折ると家の床で頭を下げて土下座の姿勢になる。


「ごめんなさいっ、自分の立場を、わかってませんでしたっ♡」

「そうそう、そういうの」

「本当に申し訳ございません……この通りです、お慈悲をくださいっ……」

「んー」


 下着姿での土下座。希さんの腰がぴくぴくと小刻みに跳ねるように動いている。

 あまり日に当たることがないのだろう、白く滑らかな肌は撫でると気持ちよさそうだ。


「働いてる時も、ゲームしてるときも、ご主人様に、ぐちゃぐちゃにされたくて――」

「うん、そうだろうなぁ」

「ご主人様に初めて会った時、店長に似てるからって、勝手に私が惚れ込んでからっ、今、ここでクソ雑魚ドM宣言♡ をしちゃいましたぁ……♡」


 喋らせれば喋らせるほど希さんの無様が露呈していく。こんな姿を親が見たら泣くを通り越して卒倒してしまうに違いない。およそ二十年手塩にかけて育てたお嬢様が百合姉に出会ったせいで今こうしてあられもない姿になっているのだから。

 そう考えると確かな征服感を覚えて気分が上がってくる。それが危険な感情だということは勿論承知の上で。


「クソ雑魚……♡ えへへ、私は、ご主人様の、クソ雑魚奴隷……♡」

「えっと、頭、大丈夫?」

「んっ――♡ 私、おかしくなっちゃった、みたいですっ」


 スイッチが入った希さんはもう口先ではどうにもならない。このままでは何もできないためとりあえず立たせようと両肩に手を置こうとしたが、横から軽く力をかけるだけですぐに崩れ落ちてだらしない泣き顔を晒してしまう。胸元を呼吸で上下させていた希さんはそのまま後ろへ下がろうとしたが、うまく体に力が入らないのか音を立てて床に倒れ込んだ。

 下手に動かれるとやりづらいからIの字で仰向けになったところに跨って動きを封じる。希さんの身体は電流が走ったようにビクリと大きく跳ね、床へ押さえつけるので精いっぱいだ。


「ご主人様、ダメですっ♡ そんな、いきなり、ぎゅってされたらっ♡」

「希さん、落ち着いてください。動かないで――」


 彼女を気を付けの姿勢になんとか固定し、両腕と両足を使って身体全体で希さんを拘束する。床を転がるように体制を変え、こちらが下から持ち上げるようにしてぎっちり締め上げた。


「ひっ♡」


 喫茶店の中の時のように希さんは強く抱きしめられるだけで甘い声を上げる。顔を蕩けさせながら彼女は脱力すると、しばらくしてから揺り戻しが来たのか身体が大きく跳ねた。それを何度か押さえつけながら希さんは逃げられないのだということを身体に教え込む。口で何度言っても聞かないためだ。

 餅のような肌は触り心地抜群。うっかりしたらこのまま情欲に流されてしまいそうで、ぐっと堪えながら抱きしめ続ける。


「あぁ、ダメ、逃げられません♡ 締め付けられちゃう……」

「落ち着いて、ください……!」

「ひゃあああ♡」


 半開きの口でだらしなく喘ぐ希さん。

 その顔を見た俺はあることを閃き、すぐさま行動に移した。


「こっち見てください」

「ご、ご主人様、んっ――――♡」


 トロトロに濡れた唇を捕まえるよう、優しい口付けを送った。

 既に希さんは力の入れ方を忘れてしまったのだろう。されるがまま、という言葉の通りに彼女は口内への舌の侵入を許してしまい、主導権は完全にこちらの方に渡された。甘く透明な汁を吸いながら口の中に悪戯を仕掛け、希さんの身体がぴくぴく反応する場所を見つける。

 百合姉から聞いたことがあった。キスだけで良くなってしまう人は少なくないことを。


「んん♡」

(ここだ……)


 彼女が耐えられるかを見ながら、なるべく自然な動きで希さんの反応する場所を攻める。そうしているうちにもう一度彼女は身をよじり始めて拘束から抜け出そうとした。

 逃がしてたまるものか。焦らず、確実なキスで希さんを酔わせる。


「んん……!」


 そして、その時はやって来た。

 下着姿で両腕両脚をホールドされていた希さんは抱きしめられながら口付けをされ続け、遂に身体が大きく跳ねるようにびくんとよじらせてから動かなくなった。もう少しだけキスをしてから口を離すと彼女は苦しそうにぜぇぜぇと空気を求めて息をしていた。

 あの発作的な痙攣は収まっている。ようやく、満足できたのだろう。


「はぁ……はぁ……ご主人、様♡」

「落ち着いて空で大丈夫ですよ」

「お気遣い、ありがとう、ございます♡ 好き、ですっ……」




 あれから、希さんとは度々一緒に働いたりゲームしたりするようになった。勿論姉さんたちとの都合もあるため機会はそこまで多くないのだが、遠くにいても繋がれる、というのはゲームにおける大きな利点だと言っても良いだろう。

 いつもの修道女の姿でログインしてきた彼女と、誰もいないエリアの小屋で二人きり。そうして準備が整ったら俺たちはあるモンスターを求めて移動を開始する。


「希さん、そろそろですよ」

「はいっ」


 恍惚とした表情で後ろを歩く彼女は戦う能力を持たない。

 護衛として、先頭を切って歩いていた俺はあるモンスターを見て脚を止めた。


「いました」

「うぇへへ……♡」


 そこにいたのは前に相手したローパー型のレアモンスター。

 希さんは何も言わずにフラフラと近づいて行って触手の高速攻撃を受けてしまった。あらかじめ装備とパッシブスキルで体力・防御力を上げていたため致命傷こそ負わないが、ステータスを見れば徐々に体力が減っていっているのが良く分かる。


「これいいですっ♡ VRなのにっ、気分だけで、ア――――♡」


 希さんと二人でいる間、俺が剣を抜くことはない。

 ローパーの手の届かないところで俺は彼女がやられているのを見守っているだけで、体力が尽きそうになったら回復魔法をかけるのだ。そして希さんが十分に満足したら倒してその日のマルチプレイは終了。こんなことが出来るのはゲームのおかげもあるけど、何より希さんの体質のおかげでもある。


「あ、駄目っ♡ 触手さん、あ、はああ♡♡♡」

「はぁ……」


 彼女がいつからこんな人になったのかは分からないけれど「ご主人様」となってしまったからには相応の監督責任が出てくる。たまに百合姉と相談しながら、このどうしようもないくらいドMな彼女との付き合い方を模索するのであった。こういう拗れた関係も嫌いではない。

 俺は希さんが欲する限り奔走し続ける。彼女の為になれる、というのが嬉しくてたまらないのだ。


「ひいいい♡ ご主人様、搾られますっ♡」

「オーケー、回復かけるね」

「ありがとうございます♡♡♡」


 ……度が過ぎた時は、きっちりお仕置きをするのだけれど。


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