表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/375

台風直撃の姉 3

「愛理。私も混ぜて」

その時、理子姉の声が聞こえてきた。

理子姉が俺の頭の辺りに座る。

「理子姉。せっかく将君と寝ようとしてたのに」

「私だって一人だと寂しいわよ」

理子姉の計らいにより、数秒後俺は理子姉の膝の上に頭を乗せていた。

俗に言う、膝枕である。

「ぶー」

もはや顔が蒸発しかねない俺をさておき、愛理姉は口をとんがらせた。

理子姉を大人の女性とした場合、愛理姉は子供のようだ。

「どうしたの? 顔が真っ赤ね」

理子姉は俺の頬を撫でながら、そっとつぶやいた。

優しくすべすべした手が皮膚に触れるたび、俺の心臓の鼓動が一段と高くなるのを感じる。

外の台風の轟音が、今の俺の耳には入らなかった。


朝ごはんが食卓に並んだ。

愛理姉が作った、白いご飯に鮭。玉子焼きとほうれん草のおひたし。

食卓には、百合姉以外が座っていた。

「あれ、百合姉は?」

「まだ寝てるよ。仕事で疲れてんだって」

理子姉は静かに言う。

ふと、泣いている百合姉の姿が俺の脳裏をかすめていった。

「ご飯食べよ。将君」

「……ああ」

後で様子見に行くか。百合姉が心配だし。

玉子焼きを運ぶ手の動きが、いつになく鈍く感じられた。


百合姉の部屋は、暗かった。

奥にあるベッドに乗っている布団が、山になっている。

……いる。

「百合姉?」

「……」

返事はなかった。

俺はベッドの近くまで足を運び、百合姉の布団を少しめくる。

「……!」

百合姉は、俺の腕を掴んで中に引きずり込んできた。

「おわっ!?」

あっという間に百合姉に抱かれてしまう。

……この感触、まさか。

「将……」

「百合姉……」

百合姉は、下着姿だったのだ。

見えなくても、身体中が感じるフェロモンの量が半端じゃない。

部屋が真っ暗だという事に感謝しなければ。

さもないと、鼻血を出して空へ逝ってしまう。

というより、この状況を何とかしないと。

「私は、将の事が好き……」

まるで、俺がそこにいないかのように百合姉はつぶやいた。

百合姉の吐息が俺の首にかかり、少しだけ湿り気を帯びる。

それは媚薬のようで、俺の身体は徐々に熱を帯びていく。

気がつくと、俺は百合姉の背中に腕を回していた。

「将……?」

「百合姉……」

戻れない。

こうなると、俺はもう戻れなくなってしまう。

ただでさえ感情的になると暴走する俺に、百合姉の吐息が重なった。

百合姉の胸が俺の身体に当たり、俺の身体中から汗が滝のように出る。

そして、俺は百合姉を思い切り抱きしめた。

「ちょ、将……!」

「ごめん。百合姉」

嫌だった。

絶対に嫌だった。

一人で泣いて悲しんでいる百合姉を、ただ見ているだけにする事が。

「今日は、俺と一緒に寝てくれないか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ