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オレンジジュースと星空の姉友 3(終)

 天気予報の通り、よく晴れた夜だった。

 夏が終わって若干の肌寒さはあるが、さしてそれは問題ない。


「こんな場所が」

「家を探す時、ベランダは絶対に外せないって思ったんです……」


 二階にある六畳間程の広いベランダに、外使い用の椅子を二人分用意して座っていた。手元には希さんが作ってくれた、甘く冷たいミルクティーがある。


 上を見ると広がっているのは満天の星空だ。

 周囲の民家の光がうまいこと届かなくなっているこの場所は、都会の騒がしい明かりにも邪魔されずにゆっくりと星を楽しむことが出来る。


「こうやって、毛布にくるまりながら寝るんです……」

「風邪ひきませんか、それ?」

「とても暖かいですよ。ごしゅ……将さんも、やってみてください」


 いつの間にか自分の分も用意されており、断るのも悪いと彼女と同じように毛布を使ってみる。すると、しばらくして上半身がぽかぽかと暖まりだした。


「ああ、いいですねこれ」

「椅子も、空を見やすいように背もたれの角度が緩いのを買ったんですよ」

「おおっ、楽な姿勢……ご飯とトイレ以外ずっとここで寝てられそうですね」

「トイレはおむつを履けば……あっ」


 聞き捨てならない言葉をキャッチしたような気がして希さんの方を見る。

 僅かに顔を赤くし、先程の事に知らん顔をしていた。まあ許す。


 少しだけ空気が変わってしまったが、楽な姿勢で星空を見上げると、先程までの妙な距離感も今日あった出来事も全てが吹き飛んだ。


「綺麗だ」

「そうですね……」


 夏の大三角、冬の大三角はよく聞くが、秋の星座はあまりピンとくるものが無かった。先程、希さんの家で読ませてもらった本の内容をぼんやりと思い出す。


 あれが確か北斗七星、それであれが北極星で、あの辺りにあるのが――

 目で追いかけている中でも星は微かに動き、宇宙という物がいかに巨大なのかを思い知らされるようだった。巨大な作品の一部になったような気分である。


「ん……」

「希さん?」

「なんだか、眠くなってきちゃいました……」


 毛布で身体をぬくぬく温めながら、希さんは横になるような姿勢で目を閉じる。

 その表情は穏やかで、気が弱い分、誰よりも優しい微笑みを浮かべていた。


(希さんの被虐癖、もうちょっとだけマシになってくれたらいいんだけど)


 そんなこと考えてもしょうがないか、と一人で笑う。

 すると自分にも眠気がやって来た。いろいろあって疲れたのだろうか。


 ちょっとだけ、ちょっとだけ。

 そう言い聞かせながら、星空の下で毛布にくるまり、目を閉じた。



 普段と寝る姿勢が違う為か、しばらくして起きてしまった。

 スマートフォンを見ると時間は深夜。隣の希さんはぐっすりだった。


「……うーん、そっか。希さんはいつもこうやって寝てるもんな」


 彼女がまだ眠っている中、自分はぱっちりと目が覚めてしまった。

 起こさないようにそっと立ち上がり、希さんの家の中に戻る。


 とは言ってもやることはない。

 廊下を歩いていると、一つ気になる部屋を見つけてしまった。


「ん?」


 どうやらそこは希さんの自室のようだった。

 勝手に入ってはいけない、そう自制しようとしても、止められない。

 自分は彼女の主人だから――そんな暗示が頭の隅に残っているのか。


(大丈夫、ちょっとだけだから……)


 頭の中に免罪符を貼りつけ、彼女の部屋の中に入った。

 ほのかに黄色い壁紙の部屋は明るい雰囲気で、いかにも希さんの部屋、という感じがする。ベッド、本棚、机、どれも彼女のおとなしいイメージ通りだ。


 机の上には小さなディスプレイが置いてあり、その脇にはなにやら空DVDの山が出来ている。その内の一枚を手に取って見ると……


「うわ、うわうわ、うわぁ」


 そこにあったのはあられもない姿をした女性の表紙。

 とてもではないが健全な男子にとって刺激的過ぎる文言が並ぶそれが、希さんの部屋にごく平然とあった。それも、一枚二枚どころの量ではない。


 探せば何十枚と出てきそうなそれは、普段から集めてなければ揃わない数だ。

 さっき彼女に秘蔵のエロ漫画を見せてもらった時も驚いたけど、これは……


「あっ……」

「ん?」


 声がして振り返ると、部屋の入り口に希さんの姿があった。

 あっ、その、これは、ええとですね。


「え、ええっと、希さん、これは……」

「あぁ……はぁ、そんなぁ……」


 自分を抱くようにした希さんは、例の物を発見された様子を見てへなへなと崩れ落ちてしまった。その後、身体をびくびくとさせながら背後の壁によりかかる。


「ご、ごめんなさい、希さん。そんなつもりじゃ」

「見られ、ちゃった♡ 全部っ」


 混乱した様子の希さんだったが、その顔は今日一番で幸せそうな顔だった。

 あれ、これってもしかして……? そういうことなのか?


「あっ、ああっ、ごめんなさい、ご主人様、ごめんなさいっ……♡」


 三角座りの希さんは手を口元にやると、そのまま気持ちよさそうな声を上げて人形のようにくったりとしてしまった。僅かに上がっているスカートからは彼女の履いているおむつがちらりと見え、そこからまたあの匂いが……


「ふぁぁ……♡」

「の、希さん……」


 まただ。また、あの煮えたぎるような何かが腹の中から上がってくる。

 駄目だ、そんなことをしちゃいけない、そんなことしたら――


「こんな時もお漏らしですか? どうして一人でトイレに行けないんです?」

「ご、ご主人様、ごめんなさい、そんなつもりじゃ……」

「今日で何度目だと思ってるんですか……全く反省してないみたいですね」

「ひえっ」


 怯えている希さんへゆっくりと歩み寄る。

 そして、彼女がわなわなと口を震わせている間に、まだ少しだけ膨れていたお腹を足でぐりぐりと踏みつけた。


「これで、全部、出してください……!」

「ひあ゛ぁあぁぁぁぁ……!」


 希さんが絞り出されるような声をあげた。

 その後、軽く脇腹を蹴ると、彼女は四つん這いで逃げ始める。


「ご、ご主人様ぁ、やめてくださいっ」

「駄目だ、あなたはお仕置きされないといけない……!」

「あひっ♡ 駄目です、お股蹴らないで、んはぁ!」


 股の部分を後ろから足の甲で蹴り上げる。

 すると、お尻を突き上げるような体勢で希さんが倒れた。


 めくれたスカートの中からは、わずかに湿った紙おむつが出てくる。

 おむつで吸いきれない程にお漏らしをしているのだ。許せるはずがない。


「希さんは、一人の時、あんなエロ作品ばっかり見てたんですね……!」

「ひんっ、ちがいます、ちがいますっ……」

「嘘をつかないでください!」


 本当に彼女がお漏らししている事を確かめるため、おむつに顔を近づけて匂いを嗅ぐ。うん、間違いない。希さんはお漏らしして気持ちよくなってしまったのだ。


「やあぁっ♡ ご主人様、嗅いじゃ駄目ですっ」

「やっぱり漏らしてるじゃないか、これはどういうことですか、希さん」

「ひんっ、ご、ご主人様に、えっちな趣味がバレて、漏らしちゃいましたぁ……」


 聞けば聞くほど本当にどうしようもない理由だ。

 これは矯正する必要がある。このままじゃダメなんだ……!


「希さん……覚悟しておいてくださいね」

「そ、そんなぁ、ご主人様……!」

「あなたにはかなりきついお仕置きをしないといけません」


 こんな状況だと言うのにどこか楽しそうにしている希さん。

 その表情を恥辱で一杯にしてやる。そうしないと気が済まない!



 矯正がひとしきり終わった後、百合姉に車で送ってもらって希さんの家に戻ってきた。部屋の中で毛布にくるまっている希さんを見ながら、百合姉にこれまでのいきさつを話す。


「なるほどね。それで、希にお仕置きをしてたの」

「そういうこと。これで治るといいんだけど」

「それはないわね」


 くすくす笑いながら百合姉が続けた。


「きっと、希はさっきのも病みつきになっちゃったはずよ」

「あー、逆効果だったか……」

「元から治すつもりなんてなかった癖に、何言っちゃってるの」


 百合姉から指摘されて、そういえばそんな気もする、と我に返る。

 目の前でぐったりしている希さんを見ながら、今回も彼女の手の平でいいように「ご主人様」を演じてしまったのだと反省していた。


いったい何があったかはノクターン版をお楽しみに。

ハロウィン特番は10月末辺りに更新しますので、そちらもよろしくお願いしますね。

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