台風直撃の姉 1
居間でのんびりしていた俺に、愛理姉が話しかけてきた。
「天気予報見た?」
「天気予報?」
テレビをつけると、ちょうど夜の天気予報がやっていた。
〈明日は、東京に台風が直撃します。みなさんお気をつけてください〉
……台風か。来るのは久しぶりだな。
〈なお、激しい雷雨が来るので……〉
雷雨ね。なるほど。
愛理姉はテレビを消すと、外にある洗濯物を中に入れた。
外は星が見えるほどだ。嵐の前の静けさ、ってやつっぽい。
「雨戸もやっておかないとな」
「うん」
俺は雨戸を設置するため、外へ出た。
次の日。
「うは。こりゃあ酷い」
朝、俺は風がごうごう吹く音で目が覚めた。
雷はなっていないが、これは想定外の強さだったな。
おかげで高校は登校自粛だ。
「電話はつながるみたいだな」
俺は健一に電話をかけた。
「……あ、健一か?」
〈ああ。こりゃ酷いな〉
「全くだ」
呆れたような健一の声が聞こえてくる。
「そっちは平気か?」
〈雨戸がなんとか間に合ったから良かったよ〉
「気をつけてな」
〈ああ。お前の姉さんたちによろしく〉
「おう」
……姉ちゃんたち、どうしてるかな。
美香姉? 大丈夫か?」
美香姉の部屋に入った。
「……あ」
美香姉は、布団にくるまって縮こまっていた。
布団ががくがくと震え、美香姉が震えているのが分かる。
そんなに怖いのか。
「大丈夫か? 美香姉」
「……将」
声が震えていた。
こりゃ、布団の中で泣いちまっているかもな。どうしようか。
「大丈夫か?」
「……怖い」
怖いって……美香姉も子供じゃないんだから。
姉としてどうかは思うが、やっぱり美香姉はか弱い小動物だ。
「一緒に下で何か飲むか?」
「うん」
美香姉は布団から出てくると、俺のそでを掴んだ。
一緒に行こう、という事らしい。
「お化けは出ないぞ?」
「……意地悪」
俺と美香姉はそのまま部屋から出た。