バレンタインデーの姉2018(1)(理子姉)
予定
午前7時 これ(理子姉)
午前8時 ???
午後5時 ???
午後9時 ???
※姉友勢のは今回は無いです(´・ω・`)
でもちゃんとお話になってない所でもらってます。
布団の中、薄い意識で何かを抱きしめていた。柔らかくて暖かい、薄布に隠れた身体を両腕で捕まえて乾いた顔をそこにうずめる。少し大きめの胸が瞼を優しく包み、掴みかけた意識をぼんやり宙に漂わせてしまう。
「んんっ……」
頭の上から理子姉の声がした。彼女の両腕が背中に回って優しく抱きしめてくる。
甘くとろけるような、愛しい姉の寝起きの声。普段の理子姉も可愛いけれど、こんな感じに無防備な時の彼女はもっと可愛い。そしてこの事を知っているのは世界で俺ただ一人だけだ。
「将君、おきた?」
「今目が覚めた所……」
「ん、それじゃ一緒だね」
ふわぁ、と頭の上で理子姉が欠伸をした。姉さんから欠伸をうつされた俺も次いで大口を開け、もう一度彼女の胸に顔をうずめる。
「ありゃりゃ、もう朝だぞっ」
「まだ眠くて」
「いっぱいお姉ちゃんと寝たでしょ?」
「まだ足りない……」
「むーっ」
離れたくないからもっと力を込めて理子姉を抱きしめ続ける。
ちょっと驚いたような彼女は抱きしめた時に回していた手で背中をぽんぽん叩く。
「だめだよ、ちゃんとおっきしないと怒っちゃいますよ?」
「理子姉になら怒られてもいい……」
「むきぃ、そこまで言うなら……」
理子姉が不意に俺を抱きしめたまま身体を起こし、やや強引に彼女の胸から離れてしまう。直後、まだ薄らぼんやりしているこちらを見据えた理子姉はゆっくりと顔を近づけて来て唇が触れ合うキスをしてきた。
ちゅっ、とほんの少しだけ触れるだけなのに頭の中が少しずつすっきりしていく。もっとキスをしたくなって近づけても理子姉が肩のあたりに手を置いて制止してしまい、お預けを食らったように彼女がにやにや笑っているのを見ることしか出来なかった。
「おきた?」
「まだ、ちょっと」
意地悪そうに尋ねる彼女の笑顔にドキドキが止まらなくなっていく。
少し焦りながら答えると理子姉が目を閉じてもう一度優しいキスを送ってくれた。今度はちょっとだけ舌で唇の間をぺろりと舐めていき、心の中をそっとくすぐられる。
また離れてしまった。とろんとした目で理子姉はもう一度同じ質問をしてきた。
「おきた?」
「まだ……」
自分の心臓の音が分かる程に鼓動が早くなっていた。もう理子姉しか見えなかった。
「……んっ、ちゅ、はむっ」
三回目のキス。今度はお互いの舌を入れ合い、深い所でより熱い物を求めあう。肩に置かれていた理子姉の手もなくなり、互いに抱き合った姿勢で優しさと愛情に満ちた朝のひとときを過ごした。
微かに目を開くと理子姉も同じようにしてこっちを見ている。姉さんもこちらの事しか見えていない、そう思うと、今俺が我慢できないのと同じように理子姉も我慢できないんだと分かって更に姉さんの事が欲しくなって堪らなくなってしまう。
「理子姉、好き……んんっ」
「ん、ちゅぷ、はっ、私も、んっ、好きだよ、将君、ちゅっ……」
姉弟揃って、俺も理子姉もこの気持ちに逆らうことが出来ないようだ。このまま溶けて一つになってしまうのではないかと思う程の淡い快感に身を任せて二人だけの朝の挨拶を済ませてしまった。
熱が落ち着くまでキスを貪った後は少しの距離を置いて見つめ合う。理子姉の顔はまだ微かに火照っていた。そこに手を置くとわずかに熱い。
「どう?」
「少し暖かい」
「将君とキスしたから、お姉ちゃんもドキドキしちゃった」
そう言って理子姉がぱちりとウインクをしてくる。
胸元をきゅっと締め付けられたような切ない気持ちが込み上げてきた俺はもう一度理子姉に抱き着いてしまう。大きな子供をあやすように彼女は抱き留めると先程したように背中をぽんぽんと叩いてくれた。
「将君、今日はバレンタインデーだよ」
「あっ……そうだった」
「みんな将君にチョコレート渡したがってるだろうから、ね。行ってあげて」
理子姉は俺を抱きしめたままベッドから出て立ち上がり、こちらも立たされてしまう。そしてベッド際の台に向かった理子姉はそこに置いてあったラッピング済みのチョコレートを手に取って戻ってくる。
「将君。大好きだよ」
太陽のような笑みと共に差し出されるチョコレート。それを受け取った時、俺の心の中で何か甘くて優しい気持ちが広がっていった。本当に理子姉が自分の事を愛してくれていること、そして自分が本当に理子姉の事が好きなのだという事が分かって、息を乱しながら彼女と別れて部屋を出てしまった。
また理子姉とは愛し合える。それが分かっているから、別れも辛くはない。




