大切な姉 5(終)
俺は体中に冷や汗をかいて飛び起きた。
外から、救急車の音が聞こえてくる。
「……姉さん!?」
急いで俺は部屋から出て、下の居間へと飛び込んだ。
……誰もいない。
「……!」
誰もいない。
俺は台所へ向かった。
「愛理姉!」
誰もいない。
「……そうだ、百合姉は」
百合姉の部屋に走った。
ドアを開ける。
「百合姉!」
誰もいない。
「……嘘だろ。おい」
俺はその場にくず折れた。
外からは救急車の音が聞こえてくる。
近い。物凄く近い。
「……」
俺は重い足取りで、玄関から外に出た。
「……」
そこには、姉さんたちがいた。
全員、無事だった。
「……?」
「どうしたの? 将君」
「あ、心配させちゃったかしら?」
「そんなに焦った顔しなくていいわよ。将」
4人とも、どこにも傷は無い。
どうやら、お隣さんの家に車が突っ込んだようだ。
俺は力なくその場で膝を付く。
「将!」
「将君!」
心配、させるんじゃないよ。
てっきり姉さんたちが病院に運ばれたかって……
俺の顔を、誰かが包み込んだ。
「姉さん……姉さん……!」
誰かは分からなかった。
俺の頭を優しく撫でてくれた。
……俺、全然ダメじゃん。姉さんの事が好きじゃないか。