年末の姉2015 3
夜になると掃除や料理の準備も終わり、やっと一息つけるようになった。テーブルの上にはオードブルや愛理姉の手作り料理、ピザが並んでいる。コップは五個ではなく八個並んでいた。これはもしかして、と百合姉に尋ねると。
「千秋たちも来るわよ。良かったわね」
ニッコリとした百合姉に言われてつい照れくさくなってしまう。店の買い物の時の言葉が影響したのだろうか。どちらにしろあの三人がやってくることは嬉しいことである。そう思っている内にも家の前に車が一台止まった音がする。
「迎えに行ってなさい。もう少し料理を並べておくから」
百合姉に言われてまま玄関に向かうと、そこには千秋さんと希さんが立っていた。千秋さんは片手に日本酒が入った袋を提げている。希さんはお菓子がいっぱい入った袋を提げていた。千秋さんは出会い頭に突然ぎゅっと抱きしめてくる。
「会いたかったぞぉ」
「ちょ、千秋さん、クリスマスの時に会ったんじゃ」
「五日も会ってなかったら十分だろうがぁ」
希さんはそれをたじたじな様子で見守っていた。千秋さんはそれに構う事もなく乱暴にぎゅっと締め上げてきて少し苦しい。後ろから百合姉の物らしき足音がした。
「あら、早速お楽しみかしら?」
「挨拶だよ挨拶。ほら、これ持ってきたぞ」
やっと解放された。千秋さんが持ってきた日本酒を掲げると、百合姉はそれを見て満足そうな反応を返す。この二人はおそらく飲み明かすつもりだろう。希さんは俺にお菓子がいっぱい入った袋を見せてくれた。俺としてはこちらの方が嬉しいぞ。
「ポテトチップスにチョコレートにひねりあげ……たぶん気に入ってくれるかなって」
「大好きですよ。ありがとうございます」
「ひゃっ」
希さんが顔を赤くしてうつむく。何かおかしいことを言ったかと思案していると千秋さんが頭を乱暴に撫でてきた。
「しれっと照れくさいこと言ってるんじゃねえよ」
「え、何か、まずいこと言いました?」
「本当に将は鈍感ね……二人とも上がりなさい?」
百合姉にまで呆れられてしまう。千秋さんと希さんは百合姉に促されて上がっていった。
今度は理子姉から玄関で待っているようにと言われてしまったので仕方なく玄関で待つ。しばらくしたら車の音がして、また少し待つと玄関になぎささんがやって来た。サイドテールの彼女は玄関先で待っていた俺の姿を見ると、少し顔をしかめて言う。
「待ちきれないのは分かりますけど、玄関で待ってなくてもいいのに」
「理子姉に頼まれたんです」
「理子さんも本当に変な人です……」
なぎささんも何か持ってきていた。彼女の持ってきた袋の中を見ると、中にはチューハイ缶とビール缶、大量のおつまみが入っていた。おそらく理子姉と飲むつもりであろう。
「将さんは駄目ですよ?」
「わかってますって」
「……あと、その」
なぎささんは頬を赤く染めると、少し言いづらそうにうつむいて言う。
「酔って止められなくなったら、その時は、ごめんなさい、というか……」
「大晦日ですから気にせず飲んでくださいよ」
なぎささんは辺りに誰もいないことを確認すると、顔を寄せてキスを交わしてきた。少し長めのキスであった。終わった後に彼女との間に無言の時間が流れる。そして、なぎささんは恥ずかしそうな顔をし、俺の肩を平手ではたくとさっさと上がって行ってしまう。
居間からは賑やかな声が聞こえてきた。女心は難しい物だと思って俺も中に入る。
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次は8時です




