潜る姉 1
今回は5話に分けて更新します。更新間隔も4日より短くする予定。
※理子姉視点
晩御飯を食べた後、仕事で疲れたからベッドで横になっていると、急に眠気がやって来てしまった。部屋の明かりを消して布団で体をくるむと、しばらくして部屋のドアが開く音がした。足音はあんまり大きくない。あやしい人でもないから、と目をつむっていると、足元をもぞもぞと何かが這うような感じがした。最初はつま先あたりにあった何かが、徐々にこちらへ近づいてくる。
「ううぅ……」
よくわからない化け物かもしれないと少し震えてしまった。身体をしっかりと掴まれてしまっていて逃げることも出来ない。将君だったらこのまま服を脱がされちゃうんじゃないか、と思うと、急に身体につめたい何かが走って、息が荒くなってしまう。いや、この手の感覚は違う。将君にしては小さい。とすると……
「りこねぇ」
布団からひょこっと顔を出したのは美香ちゃんだった。私の胸を枕にしてうつぶせになると、顔をじっと見てきた。美香ちゃんがこうやって布団に入って来る日は決まっている。
「どうしたの?」
「……ひとり、さびしい」
そうだった。今日は将君が百合姉と一緒に千秋の焼き鳥屋さんに行っちゃった日。愛理は台所でいろいろと片づけをしている時間帯だから、自然と美香ちゃんは一人になってしまう。いつもは私も起きている時間だけど、今日はたまたま疲れて寝る時間が早かったからこうなった、というのもあるかもしれない。
「将君は行っちゃったからね」
「うー」
「よしよし、ほら、おいで?」
美香ちゃんはぎゅうっと抱き付いたまま動かない。本当に本当にかわいい。ついなでなでしてあげたくなっちゃうし、いっぱい甘やかせたくなっちゃう。
「……むぅ」
ぎゅっと抱いたまま頭を撫でて挙げていると、美香ちゃんは寝息を立てたまま動かなくなる。私専用の抱き枕が出来た。少し小さいけど、それが一番ちょうどいい。時折私の身体を無造作に触ってきたりするけど……そこはかわいいので許します。
「あ、あぅ……美香ちゃん、そこはだめだよぉ……」
「りこねえ、だいすき」
その言葉を聞くと、つい彼女に優しくしてしまう私がいたりいなかったりして。
 




