大切な姉 2
おばさんは、少し下の方を向いた。
泣いている私の頭をなでて、にっこりと微笑む。
「ごめんね……ごめんね、おばさん!」
私はその場で膝を折り、おばさんのベッドに顔を突っ伏した。
どうして。どうして。
私は将君のお姉ちゃんなのに。将君の家族なのに……!
「愛理」
頭に、おばさんの手を感じた。
ゆっくりとおばさんは、私の頭をなでている。
「愛理は、自分の弟が好きなのか?」
「うん……」
「弟として? 男として?」
「男として……」
一つ一つ言うのに精一杯だった。
姉弟として絶対にあってはいけない感情。
それを、私は持ってしまったのだ。
「好きにしたらええ」
「……えっ?」
てっきり怒られるかと思った私は、逆にその言葉で身を硬くする。
おばさんはゆっくりと、一語一語はっきりと言った。
「愛理が、やりたいようにやるのがええ」
「おばさん……」
涙が止まらなかった。
こんな自分を認めてくれる人がいる事に、今とても感謝した。
「それと、もう一つ言う事がある」
「?」
おばさんは、私に言った。
「さっき、理子と美香も来た。同じ事を言ってたよ」
「お姉ちゃんと美香ちゃんが?」
「そう」
二人が来て、私と同じ事を言ったのだろうか。
「あと、百合を呼んでくれないか? ちょっと言いたい事がある」
「うん……わかった」
まだ目は赤かったが、私は病室から出た。
「百合姉。おばさんが病院で呼んでる」
〈おばさんが?〉
電話の向こうで、百合姉が驚いているのが聞こえた。
〈今行くね〉
「私は先に帰ってるから」
〈わかったわ〉
居間で、美香姉と二人でテレビを見ていた。
例の動物番組。今日はペンギンの赤ちゃんらしい。
美香姉は机に突っ伏しながら、うにうにと変な擬音を出していた。
「……」
「……ぁ」
美香姉と視線が合った。
美香姉は恥ずかしそうに顔を赤くすると、少しその場でうつむく。
なんか、最近姉ちゃんたちの様子がおかしいな。
「……」
「……」
何だか気まずい雰囲気になってしまった。