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言い出せない姉友 2

 水族館に着いた。なぎささんもあまり行くことがないと言うこの場所で、俺は今更ながらに戸惑った。自分もよくこの場所を知らない。一応地図はもらっていたが、どこをどう見て回ればよいかが全くと言っていいほど分からない。そうしていると、なぎささんが、これから先に見ましょうと先導してくれた。

「クラゲですか」

「苦手ですか?」

「いえ、なぎささんはクラゲが好きなのかなって」

「……さっさと行きますよ」

 少し頬を赤くしたなぎささんが先に行ってしまった。後ろを追いかける。少し経って、水族館のクラゲの水槽が並ぶ場所に着くと、既に到着していたなぎささんが、ある種類のクラゲが入った水槽をじっと見つめていた。そこに仕事中の彼女の姿はなく、ただ純粋にかわいい物を見て口をにへらーっとさせている女性の姿があるだけである。

「やっぱり好きなんですね」

「う、うるさいです」

 俺が来たことに気が付いたのか、なぎささんはあわてて顔を真面目風に戻した。遅かったですよと言われたが、何だか一本取ったような気がして少し嬉しかった。同じ水槽をじっと見つめていると、水槽が小さいせいか、いつの間にか顔が近くなっていることに気付く。ふと視線を横にずらした時に彼女と視線がぶつかり、お互い照れながら距離を取った。

「……将さんは、何か好きな動物はいるんですか?」

「動物かどうかは分からないですが、貝類を見るのは好きですね」

「あ、私もです。サザエとか……」

 思わぬところでなぎささんと趣味が合った。クラゲを見ながらしばらくお話をしている内、なぎささんと大分こなれることが出来た。水族館に行くのもノープランであったため彼女が楽しんでいるか心配していたが、どうやらその心配はなかったようだ。

 クラゲの次は、と考えていると、なぎささんのお腹からきゅううと音が聞こえてきた。しばらくなぎささんの方を見ていると、彼女は頬を赤くしてうつむく。

「昼ごはんにしますか」

「……そうしましょう」

 あぁ、悔しそうに答えるなぎささんの姿が何とも言えない。


 水族館のレストランに二人で入り、適当な所に座った。窓の外からはイルカやアシカのプールが見えた。そこでいろいろとショーをやるのであろう。向かいに座ったなぎささんはメニューを見た後、ちらとこちらの方を見てきた。

「将さんは何にしますか?」

「ミニ海鮮丼ですかね」

 小腹がすいているだけなので、一応小さめの物を選んだ。なぎささんはそれを聞くと顔を凍らせ、しばらくメニューをにらめっこをする。見ているところから見て定食でも頼もうとしていたのだろうか。少し経つと、なぎささんは小さな声で言った。

「……私もそれで」

「あ、じゃあ頼みますね」

 なぎささんはお腹は鳴っていたけど、実はあまりお腹は空いていなかったのかもしれない。店員さんを呼んでそれを頼むと、なぎささんが何かを言いたげな顔でこちらを見つめてきた。目が合った時、何でもなかったかのように視線を落とす。しばらく経ってミニ海鮮丼がやって来た。

「なぎささんは少な目で大丈夫なんですか?」

「……いえ、大丈夫です。気にしないでください」

 なぎささんはもういいですと言いたそうに海鮮丼を食べだした。もしゃもしゃと、何だか咀嚼がいつもよりも多いような気がした。こちらも食べ始め、しばらく経ってミニ海鮮丼を食べ終わる。あー、もう少し頼んだらよかったかな。

「そろそろ行きますか?」

「あ……はい」

 なぎささんはため息を吐いた後につぶやいた。


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