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匂い好きの姉友 3(終)

「そして、だ」

「千秋さん!?」

 千秋さんの左手が、まさに、俺が着ている服に手をかけていて、力が入った。

「一番濃くて、一番いい匂いがするのが、この辺りかな?」

 脇の辺りに千秋さんは鼻を持ってきていた。着ていた服を脱がされ、シャツの上から匂いをかがれるのはまさに奇妙であった。千秋さんの顔は幸せそのものである。肩をしっかりと握られてしまっているため、何もすることが出来ないまま、千秋さんに任せるしかない。千秋さん、顔が。

「すまねぇな。こんなことをしちまって」

「いや、もう」

「……ん」

 千秋さんの口の端が笑った。自分の情けなさに腹が立った瞬間でもあった。彼女は再び胸を板の上に乗せると、今度はゆっくりと唇を近づけてきた。そうして、キスをしている間に、彼女は体の距離をゼロに縮めた。まさしく、密着、であった。

「まったく、不思議でならないよ。こんな奴に私は惚れてるんだから」

「それって……?」

「褒めてるんだから気にするな。何だかんだ言ってお前が一番なんだ」

 千秋さんときつく抱き合いながら、それはそれは濃厚なキスをした。


 結局千秋さんの家に泊まる形になってしまった。迎えに来てくれたのは理子姉であった。まだ布団の中で眠っていた俺は理子姉に起こされたことに驚きを隠せず、また、千秋さんの「いつもどおり」の乱暴な挨拶に何か違和感のような物を感じてしまっていた。そんな俺が気に食わないのか、理子姉は俺が起き上がるなり、すぐさまぎゅううと抱きしめてきた。

「将君目を覚ましてぇぇぇぇ」

「り、理子姉……?」

「はっはっは。大分私の身体の虜になっていたようだから、戻るまでしばらくかかるぞ?」

「えーっ。……将君、おうちに帰ったらおしおきです」

 ぎっと睨んできた理子姉に俺は慌ててうなずいてしまう。理子姉にひょいと担がれた。そして彼女は豪快に笑っている千秋さんの横を通り抜け、そのまま車の後部座席に俺を放り込んだのである。腰が痛い。

「また来いよー、将」

「は、はい」

「将君は私だけ見ていたらいいの!」

 エクストリームに不機嫌な理子姉の顔が、ちらとバックミラーから見えた。うう、怖いぞ。家に帰ったら俺は一体何をされるんだ――


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