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匂い好きの姉友 2

「……だそうだ。良くなるまで面倒見ておくよ」

 情けない。勤務中にぐったりとしてしまった。千秋さんの店の奥で休ませてもらったが、手伝おうとして逆に迷惑をかけてしまった。いつも通りに店は終わらせることが出来たそうだが、千秋さんに申し訳ない。

 店の奥で倒れていると、千秋さんはそっと頭を撫でてくれた。

「今、百合に電話を入れておいた。しばらく休んでもいいぞ」

「……すいません」

「気にするな。私もお前に無理をさせてしまったからな」

 倒れている俺の枕元に千秋さんが座った。下からだと千秋さんの胸がこんもりとしているのがよく見える。慌てて寝返りを打ち、彼女の方から視線を逸らした。しばらく目を閉じていると、上の方からじゅるりとよだれをすするような音が聞こえた。

「お前はゆっくり休んでおけよ」

「千秋さん?」

「私も、ゆっくりと休ませてもらう」

 千秋さんも横になったようで、しばらくすると後ろから抱き着かれてしまった。首筋に顔を近づけられたような感覚を覚え、千秋さんはすー、と息を吸い始める。

「あぁ……汗臭くて肉臭い」

「あの、そのちょっと」

「駄目だー。お前の匂い不足なんだよ」

 シャツの襟もとにまで顔を突っ込まれる始末である。だが、嫌ではなかった。彼女の他の人には見せない一面を見ることが出来て、逆に喜んでしまっていた。千秋さんは顔を摺り寄せてくる。突然距離が縮まったことに驚いていたら、そのまま体を回されてしまい、正面から抱かれる姿勢になった。

「どうして……匂いにこだわるんですか?」

「はは、聞きたいのか」

 鼻と鼻がくっつきそうになるくらいにまで近づく。彼女の豊かな胸がぽんと胸板に乗っていた。脚もからめられてしまっていて、身動きが全くと言っていいほど取れない。

「小さいころから、男共にまじって遊んでいてな。その頃から、汗の匂いが好きだった」

 彼女の左手が、丁度こちらの腰のあたりにすっと乗った。

「でもな。私はここの成長が早いせいか、それも長くは続かなかったんだ。野郎どもがいやらしい目つきで見て来るのは分かってるからな。お前みたいに」

 右手で胸をひょいと持ち上げながら千秋さんは言った。グサッと何かが刺さった。顔に近づけられる形になり、どうしようもない気持ちになってしまう。やわらかいものがすぐそこにある。


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