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赤ワインの姉 1

 百合姉が最近ワインに手を出し始めた。いつもは缶ビールを飲んでいた百合姉だったが、缶ビールを数日我慢した後に、何だか高級そうなワインを購入したそうだ。晩御飯を食べ終わった後、冷蔵庫の中にある何かを百合姉は探していた。その頃俺はと言うと、愛理姉と一緒に皿洗いをしていたわけであって。

「将、チーズってなかった?」

「チーズ? ……あぁ、そこのカゴだな」

「ありがと」

 ワインにはチーズ。百合姉は冷蔵庫の扉を閉めると、膝を折り曲げてカゴの中にあるチーズを手に取る。何気ないその姿も彼女なら美しく見せてしまう。百合姉から目を離すことが出来ないうちに、彼女はこちらの視線に気づいた。

「……将?」

「あ、ごめん」

 すぐさま目をそらす。百合姉はんー、とよく分からないような声を出した後、チーズを持って自分の部屋へと戻っていった。愛理姉が肘で小突く。

「お姉ちゃんばっかり見ないの」

「すいませんでした」

 百合姉にワイン。なんとなく似合うような気がした。百合姉は大人の女性であるため、きっとワインを飲んでいる姿は映えるだろう。そんな事を考えていると、それを察知したのか、愛理姉が拗ねたように尋ねてきた。

「私だって大人になったらワイン飲みますー」

「愛理姉がワイン……うーん、想像できん」

「将君のばかぁ!」

 正直に言ったら、彼女に洗い立てのしゃもじで頭を叩かれた。頭が痛い。そんな風に洗い物をしていると、突然、ワインを開けるために使うだろうソムリエナイフが出てきた。愛理姉はそれをじっと見ながら言う。

「……これないと、ワイン開けられないんじゃない?」

「あー、そうかもしれん」

「お姉ちゃんに持って行ってあげた方がいいかな?」

 愛理姉は頬を赤くしながら言った。確かにそうである。せっかくワインがあっても、コルクを抜くことが出来ない限りワインは飲むことが出来ない。百合姉の力があれば開けられないことはないだろうけど……雰囲気が台無しである。手でコルクを抜く女性って。

「じゃあ、俺が持っていくか? 大分皿洗いも終わっただろうし」

「あ、そ、そう?」

 愛理姉は何だか残念そうな顔になって答えた。

「どうした? 愛理姉」

「な、なんでも……うん、なんでも……」

 愛理姉はもじもじとしながら答える。俺はソムリエナイフを持って、百合姉の部屋に向かった。愛理姉が指をくわえながら、胸の方を触っていた……のは気のせいだろう。


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