大切な姉 1
台所で、俺と愛理姉は座っていた。
俺の向かいにいる愛理姉は、とても沈んだ顔をしている。
……弟。俺の脳裏で、その単語一つが引っかかっていた。
「……将君」
愛理姉は、俺に言った。
「ごめんね。将君」
「愛理姉……」
愛理姉の目には、涙が浮かんでいた。
俺はかける言葉が見つからなく、その場で座っている事しか出来なかった。
「本当に、ごめんね!」
愛理姉はそう言うと、台所から走っていってしまった。
俺はただ、見ているだけしか出来なかった。
「うぅ……」
何で、何で私はこうなっちゃったんだろう。
いつもは違うのに。いつもは、もっと明るく振舞えたのに。
将君の前になると、私は緊張してしまう。
「将君……」
認めたくない。そんなの、認めたくない!
私はただ、将君のそばにいたいだけ!
将君のそばで……そばで……そばで……
そばで、何をするの? 将君のそばで、私は何が出来るの??
「将君……!」
ありえないよ。そんなのありえない。
私は将君のお姉ちゃんなの。そんな事が、あっちゃだめなの!
でも、私は……私は……!
「……そうだ」
一人だけ相談相手がいた。
その人なら、私の心を整理してくれるかもしれない。
会いに行こう。答えが出る。
私は、市の病院にいた。
「……理子姉。しばらく、私病院に行くから」
〈いってらっしゃい。愛理〉
病院に入り、私は受付で面接許可をもらう。
「187号室です」
「ありがとうございます」
私はエレベーターを使って、二階へ上った。
そして受付で言われた187号室へと向かう。
ドアを開けた。
「誰?」
「白金愛理です」
ベッドには、40歳くらいの女性が横たわっていた。
女性は私に言う。
「愛理か。会うのは久しぶりだね」
「確か半年ぶりですね。おばさん」
おばさんは私に、もうちょっと来いと手招きをした。
私はおばさんが寝ているベッドに近づく。
「で、今日は何を話しに来たんだい?」
「私……」
言い出そうとしたが、私の中で何かが引きとめた。
喉から言葉が出なく、うまくおばさんに言う事が出来ない。
「そんなに、辛い事か?」
「はい……っ」
何故だろう。目から、涙が出てきた。
泣いちゃいけないのに。私、泣いちゃいけないのに!
「……言ってごらん?」
「おばさん……私……」
私は、一息に言った。
「将君のことが……好きなの」