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雨降りの姉 2

 雨は少し弱くはなっていたものの、やはり傘は必要になりそうだった。美香姉に持ってきた傘を手渡すと、彼女はそれをさすことなく、こちらの傘の下に入って来る。傘を持っている右腕を掴んだ美香姉は、そのまま腕に張り付いた。少しぼうっとしているようでもあった。

「美香姉?」

「……将」

 こてんと俺の肩に首をのせる美香姉。少し俺が歩き辛いがそこは我慢。すれ違う人から興味津々な目で見られながらも、彼女と二人で家まで歩くことになった。彼女は何も言わない。何か用事があれば、袖をくいっと引っ張る仕草で表現してきた。

 駅を出て少し歩くと、美香姉は袖を引っ張った。自動販売機でジュースを買って欲しいのだと言う。財布には少し余裕があった。さっき飲んでなかったか、と見つめると、彼女は寂しそうな顔を返してくる。その顔を見てしまうと、つい財布のひもを緩めてしまうのだ。そして数分後、彼女はオレンジジュースの缶を持って笑顔になっていた。

 再び二人くっついて家まで歩く。何だか彼女はご機嫌になったのか、それとも少し子供っぽくなったのか、腕から離れようとはしてくれなかった。たまに彼女と目が合うと「どうしたの?」とでも言うかのような目でこちらを見つめてくる。頬をつつかれることもあった。あ、ジュースの缶を頬に当てるのだけはやめてくれ。

「いっしょ」

「だな」

 安心感を覚えたのか、何も言わなくなった。そのまま家に帰ることになる。玄関に着いた時、美香姉が若干ながらも寂しそうな顔をして離れていった。


 家に着いた俺たちは、愛理姉が晩御飯を作っているまでの間、二人でハニーチュロスを食べることになった。セーターに着替えた美香姉はもぐもぐと食べながらこちらをちらと見て、少し寄ってきた。腕がぶつかる。

「……将」

「何だ?」

 美香姉は二尺くらいにまで短くなったチュロスを口にくわえると、こちらを向いて、目をじっと見つめてくる。しばらく向き合っていると、美香姉が俺の後頭部を掴み、無理矢理チュロスをくわえさせる。美香姉の顔が少し上気していた。

 美香姉はこちらの身体を抱きしめると、そのままチュロスをぱくぱくと食べ始める。徐々に唇の距離は縮んでいった。そして、そのまま、美香姉とキスをしてしまった。

「んっ……」

 美香姉の甘い息がかかる。そのまま強く抱き合いながら、彼女の身体の暖かさを感じていた。彼女も同じように、キスをしながらぎゅっと体を離さないようにしている。その姿がとてもかわいらしい。

「大好き」

 長いキスを終えると、美香姉は小さな、それでもはっきりした声でそう言った。

 それから少し経ち、抱き合いながら彼女に言葉をかけようとしたが、彼女は既にすやすやと眠ってしまっていた。夕食までは時間があるため、しばらくこのままでいることにした。良い夢を見ているのだろうか、彼女は素敵な笑顔を見せてくれた。


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