表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
251/375

雨降りの姉 1

第七期更新開始です。

いつも通り美香姉のお話からじゅんぐりといきます。

 その日は雨が降った。俺と愛理姉は晴れているうちに学校から帰ってきていたが、美香姉は学校で用事があったらしく、帰ってくるのが遅くなってしまっていた。そのためか、俺の携帯電話がブルブルと震えはじめる。内容は想像通り、傘がないから駅まで迎えに来てくれ、ということだった。

 姉さんに一言言ってから、二人分の傘を持って家を出た。風は結構冷たい。駅までの道のりは結構長く感じられた。いつもは行かない場所からだろうか、それとも。思考を巡らすうちに、彼女の姿が見えてきた。彼女はこちらを見つめながら、屋根の下で立っている。

「おかえり」

「……ただいま」

 美香姉はそうつぶやいて傘を受け取った。だが、一向に傘をさす気配がない。どうしたものかと突っ立っていると、彼女は俺の腕を引いて駅の周辺のアーケード街に入った。

「美香姉?」

「こっち」

 どうやら俺をどこかに連れていきたいらしい。傘をたたみ、連れられるがままに入った店は、普段はなかなか足を運ばない高尚なカフェであった。百合姉の経営するそれとはまた趣が違い、大人っぽい雰囲気が漂っている。美香姉は制服ながらも、その雰囲気にうまく溶け込んでいた。

「将と来たかった」

「そ、そうか」

「メニュー」

 言われたままにメニューを渡すと、美香姉はメニューの後ろの方にあるデザート欄を見始めた。もともとそれ目当てだったのだろう。何を頼むのかと待っていると、美香姉はある一つのメニューを指さした。お持ち帰りの出来るハニーチュロスである。

 美香姉は店員を呼ぶと、そのハニーチュロスを二本分頼み、また、少しの間ここに居座るためだろうか、オレンジジュースとコーラを頼んだ。コーラは俺の分である。

「持って帰るのか?」

「帰ったら一緒に」

 店員が飲み物を運んできた後、美香姉はこちらを見つめながらオレンジジュースをストローで飲んでいた。しばらく見つめ合っていると、彼女の目がとろんとしてくる。眠いのかと思っていると、ジュースがなくなるにしたがって、徐々に頬が赤くなっているのが分かった。

 そしてジュースが無くなると、俺の分のコーラもすでにないことを確認した美香姉は、すでにテーブルの上に置いてあったハニーチュロスをカバンにしまうと、俺に出るように言ったのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ