雨降りの姉 1
第七期更新開始です。
いつも通り美香姉のお話からじゅんぐりといきます。
その日は雨が降った。俺と愛理姉は晴れているうちに学校から帰ってきていたが、美香姉は学校で用事があったらしく、帰ってくるのが遅くなってしまっていた。そのためか、俺の携帯電話がブルブルと震えはじめる。内容は想像通り、傘がないから駅まで迎えに来てくれ、ということだった。
姉さんに一言言ってから、二人分の傘を持って家を出た。風は結構冷たい。駅までの道のりは結構長く感じられた。いつもは行かない場所からだろうか、それとも。思考を巡らすうちに、彼女の姿が見えてきた。彼女はこちらを見つめながら、屋根の下で立っている。
「おかえり」
「……ただいま」
美香姉はそうつぶやいて傘を受け取った。だが、一向に傘をさす気配がない。どうしたものかと突っ立っていると、彼女は俺の腕を引いて駅の周辺のアーケード街に入った。
「美香姉?」
「こっち」
どうやら俺をどこかに連れていきたいらしい。傘をたたみ、連れられるがままに入った店は、普段はなかなか足を運ばない高尚なカフェであった。百合姉の経営するそれとはまた趣が違い、大人っぽい雰囲気が漂っている。美香姉は制服ながらも、その雰囲気にうまく溶け込んでいた。
「将と来たかった」
「そ、そうか」
「メニュー」
言われたままにメニューを渡すと、美香姉はメニューの後ろの方にあるデザート欄を見始めた。もともとそれ目当てだったのだろう。何を頼むのかと待っていると、美香姉はある一つのメニューを指さした。お持ち帰りの出来るハニーチュロスである。
美香姉は店員を呼ぶと、そのハニーチュロスを二本分頼み、また、少しの間ここに居座るためだろうか、オレンジジュースとコーラを頼んだ。コーラは俺の分である。
「持って帰るのか?」
「帰ったら一緒に」
店員が飲み物を運んできた後、美香姉はこちらを見つめながらオレンジジュースをストローで飲んでいた。しばらく見つめ合っていると、彼女の目がとろんとしてくる。眠いのかと思っていると、ジュースがなくなるにしたがって、徐々に頬が赤くなっているのが分かった。
そしてジュースが無くなると、俺の分のコーラもすでにないことを確認した美香姉は、すでにテーブルの上に置いてあったハニーチュロスをカバンにしまうと、俺に出るように言ったのであった。




