友達込みの避暑地探訪 8
百合姉に抱きしめられながらの朝を迎えた。目が覚めると、いかにも不機嫌そうな他の姉さんたちの顔が目に入る。百合姉をどけようとしたが、某エイリアンの映画に出て来るアイツのように離れてくれない。
「ね、姉さん、百合姉を剥がして」
「だめだったよ。お姉ちゃんはこうなると絶対に離れないもん」
愛理姉はぶーっとふてくされた顔で言う。一方の百合姉は起きる気配なし。頑張って剥がそうとすると、離れたくないと言いたげにぎゅうううとさらに締め付けてくる。百合姉の寝息が顔にかかり、このままでもいいかなと思い始めている自分もいた。
「将君、百合姉に負けちゃだめだよ」
「理子姉、そんなこと言われたって……」
百合姉の身体に潰される。香りに包まれたまま、昨夜の続きに引きずり込まれてしまう。だ、だめだ、このままでは……
「将、私に貸してみろ」
いつの間にか部屋には千秋さんの姿があった。千秋さんはやや強引に百合姉を後ろから抱くと、そのまま俺ごと持ち上げる。そのまま、ぐるぐるぐるぐると部屋で百合姉を回し始めた。う、お、俺も目がぁぁぁぁ。
「ん……」
百合姉に反応あり。千秋さんが百合姉をぽいと投げ捨てると、俺は百合姉と一緒にゴロゴロと床を転がり、何とか離れることに成功する。うー、背中。
「……おはよう、千秋」
「やっと起きたな」
不機嫌そうに起きた百合姉は、はねた髪を整えるべく洗面所へ向かった。
なぎささんは秋田に用事があるらしいので、しばらく旅館でぼうっとしていることにした。横になっていると、美香姉が携帯ゲーム機を二台もってこちらへやってくる。一台受け取り、電源を入れると、中にはぷよぷよが入っていることが分かった。いつものか。
「美香姉、やるか?」
「うん」
俺と美香姉でゲーム機を通信状態にし、ぷよぷよを始めた。他の姉さんも周りに集まってくる。今までテレビでしかぷよぷよはやったことはなかったが、携帯ゲーム機でも大して操作は変わっていない。実力が出せる。
美香姉は結構練習を積んでいたらしい。俺が押されている。今まで美香姉に押されることはなかったが、今日は美香姉が優勢だ。いや、負けてたまるか。
「……」
「……」
そして、俺の列のぷよが、一番上まで積もった。完敗だった。最初は美香姉にぼろ勝ちしていた俺が、ここまで負けるとは正直思ってはいなかった。美香姉は嬉しそうにしているため、俺はあまり悲しくはないのだが。彼女の頭を撫でてあげると、美香姉は俺の胸元に飛び込んで、猫のように甘え始めた。
「美香姉、強くなったな」
「練習した」
「凄いよ」
周りの姉さんたちはそれをほほえましい様子で見ていた。あ、愛理姉と百合姉にゲーム機取られた。ま、いっか。しばらく美香姉と一緒にごろごろしよう。
 




