友達込みの避暑地探訪 6
横手焼きそばは、市販の辛いソースではなく、甘みのある、なんというか、コクのあるようなソースを使っていた。焼きそばの上に乗っている目玉焼きを割ると、その黄身がたらーっと焼きそばに流れ、ソースと絡むことでこれまた絶妙な味わいを生み出す。紅ショウガも抜群だった。
俺は百合姉、千秋さん、なぎささんと一緒にそれを食べていた。隣のテーブルでは理子姉と愛理姉が、美香姉と希さんを座らせようと必死である。
「……で、しばらくここを見るのね」
「そうですね。美香さんや愛理さんが多分喜ぶかと思います」
「旅館に戻った頃は夕方だな」
焼きそばをすすりながら三人がつぶやく。千秋さんも百合姉もご満悦のようだ。もちろん俺もである。姉さんたちと一緒に食べているからかもしれないが。
なぎささんはちらと窓の方を見て天気を確認すると、早めに自分の分を食べ終わり、時計を確認する。俺たちも大体同じ時間で食べ終わった。が、美香姉と希さんは、食べ終わったらしいが、第二ラウンドが残っているらしく。
「……将、こっち」
「あれ、しょ、将さんも?」
美香姉にくいっと引っ張られ、隣のスイーツ屋さんに引っ張られていってしまった。希さんは何だか俺が来ることが予想外の様子。ソフトクリームとかいろいろ買わされ、愛理姉と理子姉がまだもぐもぐと食べている間、それらを消化していた。
ワンダーキャッスル、という場所がある。さっきの施設を少し歩いた先にそれはあり、外から見てもそのフォルムは「奇妙」と感じられるほどワンダーである。中に入るとその奇妙さはより現実味を増す。少し奥の部屋に行くと、何だか箱を覗くような場所があった。
「百合さんと愛理さん、入ってみたらどうですか?」
「え、私と愛理?」
「わかったよ」
百合姉と愛理姉は、別に設けられた入口から部屋の中に入る。少し歩きにくそうに部屋の奥に向かい、左に百合姉、右に愛理姉が向かうのだが……
「む、これは面白いな」
「そうでしょ?」
「ほんとだぁ、全然違う」
希さんは面白かったのか、その様子を写真で撮っている。百合姉と愛理姉は何だかこっちが気になったのか、急いで戻ってきた。
「どうしたの?」
「これですよ」
希さんが百合姉と愛理姉に見せたその画像。普段は身長が高いはずの百合姉が、愛理姉よりも小さくなっているのだ。どうも、部屋の構造が結構凝っているらしい。二人は何だかむーっと不満げな顔。
「私は笑いものにされたの? 将」
「何で俺を睨むんですか百合姉、うわあああああ」
俺は百合姉に掴まれてしまった。なぎささんは百合姉にひそひそと耳打ちをすると、百合姉は俺を引っ張って歩いてしまう。それにぐいぐいと引っ張られ、周りもよく見ていないうちに俺はどこかにぽいと放り込まれた。百合姉の顔が壁の隙間から見えるので、そこから覗くことにする。
「なかなかの眺めじゃない、将」
「……これ、どういうことだ?」
「見て分からないの? あなたは檻に閉じ込められたのよ」
愛理姉たちも追いついてきたらしく、また希さんが写真を撮っていた。理子姉と千秋さんは俺と百合姉の位置関係を見て、プークスクスと笑いをこらえきれない様子。こら。
「楽しい思い出になったわね」
「……ちくしょー」
なんだかんだしている内に、楽しい楽しいテーマパークでの時間は終わった。
 




