友達込みの避暑地探訪 5
旅館を出た俺たちは、秋田県の美味しい物を探すため再び車で道を走った。しばらく走っていると、赤と黄色のパラソルが見えた。その下でおばあさんが銀色の容器と一緒に座っている。なぎささんはそれを見つけた後、車のスピードを落として聞いてきた。
「将さん、アイスでもどうですか?」
「あるなら食べたいです」
「それじゃあ」
なぎささんは路肩に車を止め、降りると例のパラソルの場所に向かう。俺たちも車から降りてその後ろについていく。なぎささんはおばあさんに200円を手渡す。すると、おばあさんは容器のふたを開け、近くにあるソフトクリーム用のコーンを一本取り出した。
近くにあった鉄ヘラで容器の中をシャクシャクとかき、ピンクと黄色のシャーベットのようなものをコーンに乗せ、周りから塗りたくっていく。何回もそれを繰り返していくうちにそれは花のような形になった。完成したらしく、なぎささんはそれをおばあさんから受け取ると、俺の方に渡す。
「ババヘラアイスって言うんですよ」
「名前が直球だな」
そのババヘラアイスという物を一口食べた。触感はシャーベットのようであるが、スプーンで食べるそれとは全然違うおいしさである。ピンクの部分と黄色の部分では味が違うのもよい。これがうまいぞ。
理子姉たちの車も後ろに止まっていて、アイスを買うべく美香姉が理子姉の袖をひっぱっていた。美香姉の目は水晶のように輝いている。愛理姉はおばあさんのヘラ使いをよくよく眺めていた。
「秋田の学校で何か行事があると、いつも校門にいるんですよ。秋田の人はほとんど知っている味なんです」
「へぇ、そうなんだ」
理子姉がふむふむとうなづく。その後ろの百合姉は下に垂れてきたアイスに苦戦しているらしい。舐めても舐めてもダラダラと垂れてくる。千秋さんと希さんはいつの間にか食べ終わっていた。
「そろそろ行きますよ」
「百合姉は大丈夫?」
「今急いで食べてるから」
がつがつと食べ始めた百合姉を横目に、俺は最後の一口を食べる。おばあさんにお礼を言った後、俺たちはなぎささんのナビゲートで次の目的地へ向かった。
かまくらで有名な横手市に来た。大きなテーマパークの駐車場に車を止め、全員そこで降りる。なぎささんの案内で、俺たちはその建物の中に入った。そして少し歩いていると、フードコートのようなものが見えた。そう言えばお昼ご飯をまだ食べていなかった。なぎささんが指差した看板には「横手焼きそば」と書いてあった。
「横手に来たなら、まずはこれですね」
「焼きそばなら腐るほど食べたことがあるが……」
「ちがうんですよ」
千秋さんのぼやきになぎささんがすかさず反応する。
「横手焼きそばは市販の焼きそばとは全然違いますよ。まずは食べてみてください」
秋田県人としての何かがあるのか、なぎささんの目がスパーンと見開く。それじゃあ食べてみようか、と、千秋さんは我先にとカウンターへ向かう。それについていくような形で百合姉も買いに行く。あれ、他の姉さんたちはどうしたのかと周りを見ていると、美香姉と希さんが隣のスイーツ店に釘づけになっていた。愛理姉と理子姉はその二人を引きはがすのに必死である。
「美香ちゃん、焼きそば食べ終わったら来てもいいからぁ」
「希さんも後で食べようよー」
なぎささんはそれを少し困ったような顔で見つめていた。俺と目が合うと、彼女はにっこりとほほ笑む。なぎささんもカウンターに向かったので、俺もついていった。




