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友達込みの避暑地探訪 4

 一人になったので部屋を出た。何だか愛理姉と百合姉の絡みを見ていたらいろんな意味で元気になってしまった。隣に千秋さんたちの部屋を取ったようで、そちらへ向かってみることにした。一人だから寂しいのである。そうである。

 部屋の戸をそっと開けると、布団の山が一つだけもっこりとなっているのが見えた。どうやら三人の内二人はいないらしい。じっと部屋の中を見ていると、廊下で働いていた従業員の人に不審な目で見られてしまった。怪しい者ではありませんよ、と俺は半ば慌てながらその部屋に入った。

「……セーフ」

 従業員さんに注意されることはなかった。とりあえず靴を脱いでおじゃまする。布団の山をよく見ると、それはなぎささんが眠っているからだと分かった。千秋さんと希さんはどこかに行ったらしい。そう言えばなぎささんの寝顔は見たことがなかったと思い当たり、後ろめたさを抱えながらも、彼女の枕元に足を運ぶ。

「んにゃ……」

 なぎささんは寝言をぐちゃぐちゃ言いながらころんと寝返りを打つ。それで気が付いた。彼女はキャミソール姿で寝ていたのだ。いつものがちがちの装甲をまとっている彼女からは考えられないようなだらしない服装を見て、頭の中にはいろいろな妄想がはびこる。それを抑えるべく、近くにあった床に頭をガンと打ち付け、何とか理性を保った。が、どうもそれがまずかったらしく。

「……?」

 なぎささんが起きた。

「あ」

「……将さん」

 なぎささんは最初はぼんやりとしていたのか何も反応しなかったが、自分が着ている服に気付くと、布団で上半身を覆ってこちらをきつい目で睨んだ。

「何やってるんですか?」

「あ、い、いえ、その」

「答えてください」

「……隣の部屋に来ようかなって」

「それで、私の下着を拝もうと?」

「そ、それは不可抗力で」

「……」

 なぎささんの目は冷たかった。まるでゴキブリを見るような目で見つめられた。結構心に来るものがあり、何だか底に落ちたような気分になる。

「馬鹿」

 なぎささんはそう言った。そして、俺の右腕をがっしりと掴む。お、怒ってるこれは。千秋さんが無視した時や希さんがお漏らしをしたときと同じだ。こ、このままだと殺される。逃げようにもこの状況では逃げられん。

「す、すいませんでした」

「謝っても無駄ですよ?」

 なぎささんは掴んだ右手を引き、俺を布団の中へと引きずり込んだ。彼女は不敵な笑みを浮かべたまま、完全に優位に立ち、俺の身体を脚で固定した。どうやら下はジャージを着ているらしい。と観察している場合でもないんだが。

「私の身体は安くはないですからね。きっちり、払ってもらいますよ」

「な、何を……」

「決まってるじゃないですか」

 なぎささんは俺に胸を押し付けながら、片手を恋人つなぎで封じた。キャミソールの間から彼女の水色の水着がちらと見え、さらにその隙間から、彼女の「なまちち」が少し見えた。その視線に気づいたのか、少しなぎささんは不機嫌な声を出す。

「どこを見てるんですか? そんなご身分じゃないでしょ」

「す、すいません」

「もう許しませんよ」

 なぎささんは俺を床に固定し、またがって俺の脚も封じた。こうなってはもう彼女のされるがままである。彼女にキスをされ、抱きしめられ、彼女の物になってしまった。きっと、今の自分ではなぎささん以外の人とでは満足できない。彼女の声が、体が、匂いが気持ちよいのだ。

「胸ばかり見ないでくださいよ」

「す、すいませんでした、その」

「謝っても無駄だって、さっきも言いましたよね?」

 駄目だ。完全に主導権はなぎささんに握られた。なぎささんは俺のモノの部分にまたがると、その目つきを女王の目に変える。下僕の自分はただ従うしか。

 その時だ。助けがやって来た。戸が少しだけ開いていて、誰かが覗いている。

「……あ」

「あ」

 なぎささんは開いた戸の方を見て体を硬直させた。俺も最初は助かったと思っていたが、かえって面倒くさい事になりそうな気がして気が滅入る。こちらを覗いていたのは、なぎささんの仕事相手でもある、理子姉だった。少ししか戸が開いてないからよくわからないが、それでも理子姉の背後の「手を出すな」オーラはこちらへ伝わってくる。

 なぎささんの額には汗が流れていた。理子姉は部屋に入って来て、固まったまま動けないなぎささんを抱き、俺から引きはがした。そして、今度は理子姉がなぎささんの上にまたがり、ガチガチのなぎささんの頬を撫でる。

「私の将君にそんなことするなんて、なぎさちゃんも大分生意気になったねぇ」

「すいません、本当にすいませんでした理子さん、なんでもしますから許して」

「ん? 今なぎさちゃん、なんでもするって」

「あ」

 なぎささんの顔が恐怖でひきつる。理子姉はまぶしい程の笑顔を彼女に向け、そして、俺の方を向いた。怖い。理子姉の本心が手に取るようにわかってしまう。こ、殺されるぞ。なぎささんが怒った時とは比べ物にならん。

「将君。後で、一緒に散歩しよう?」

「ひゃ、ひゃい」

「それじゃあ廊下で待っててね。なぎさちゃんを堪能したら、私も出るから」

 理子姉に逆らえず、俺はそそくさと部屋から立ち去る。なぎささんの押し殺したような悲鳴が背中に突き刺さり、何とも微妙な気持ちでの別れとなった。


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