お手伝いの姉 2
少し早いお昼の休憩。いくら隠れた名所とはいえ、人は昼になると一番多くなる。火の車とまではいかないが、早めに昼食を食べる必要があったのだ。
百合姉は「先に食べてなさい」と一人で店番をしてくれる。その間、俺と美香姉は希さんと一緒に昼ご飯を食べることになった。道中コンビニで買ってきたお弁当を俺と美香姉は広げる。愛理姉に迷惑はかけられなかった。
「……希さん、大丈夫ですか?」
「ふぇっ!?」
「様子がおかしいなと思って」
希さんはしばらく何も言わなかったが、少し経つとぽつぽつと言葉を発する。
「しょ、将さんに、会うのが、久しぶりで……」
そう言ってばふっと口から魂のようなものを出した希さんは、ふらっと気を失ってしまう。突然の事に俺と美香姉は顔を合わせ、こくりとうなずいたのちに希さんを二人で抱える。
「むにゃぁ……将さぁん……」
希さんの口元が丁度俺の耳元辺りに来て、そして彼女はそうつぶやいた。ぞわっとくる感覚を味わい、俺は少し挙動不審になってしまう。美香姉が心配そうにこちらを見つめてきた。
「……平気?」
「う、うん」
希さんの様子を俺が見ることにし、美香姉と百合姉にお店を任せることにした。店の奥の部屋で俺と希さんは二人きりになる。とは言っても、希さんはふしゅぅとしおれてしまっているが。
近くに寄って希さんの顔を覗いた。意識を失っているとはいえ、眠っているような顔である。すぅ、と時折息をする声が聞こえるのも、またかわいい。
「希さん……」
声をかけるが、気が付く気配はない。こちらに無防備な様子をさらしている希さんにも非があると言えばそれはそれでずるい考え方だ。今ならどんなことをしても起きないのではないか、という邪な心が芽生え始めてきた。ちょっと待て、希さんは百合姉の同僚だから手を出したらまずい気がする、と自制をかけるが、それでも希さんから目を離すことが出来ない。
顔立ち、少し大きめの胸、きゅっとしまっているだろう腰。恥ずかしがり屋の性格さえ何とかなってくれればいいが、そこは希さん次第だろう。
頬にそっと触れると、「このタイミング」で希さんが目を覚ました。
「……うぇ?」
「あ」
希さんはくいくいと右手で目をこすった後、俺の方を見て、そして頬に触れている手をちらと見る。何が起きてるかを理解したらしく、びくんと希さんの身体が震えた。
「あ、あわわ、わわ、こ、これは」
「いや、その、すいませんでした本当にすいませんでした」
ままままずい。希さんから百合姉に通報されるかもしれん。なんとしても、なんとしてもそれだけは避けねばならぬ。二度と希さんに会えないかもしれないのだ。希さんの機嫌を取るべく、一旦落ち着くことにする。
「……もっと、来てもいい、ですよ?」
息遣いを荒くしながら彼女は言った。
その言葉を一度俺は空耳かと錯覚した。そして本当であることを理解する。希さんは恥ずかしそうにしながらも、離そうとした俺の手を優しく握り、そして俺を引き寄せた。店の隅で二人、体を合わせながらお互いを見つめる。
希さんは俺の方にもたれかかってくると、甘い声でこう言った。
「最近疲れてませんか? ……ご主人様」




