表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
235/375

お手伝いの姉 1

 金曜日、学校からの帰り道で美香姉がつぶやいた。

「……お姉ちゃんの店で働く?」

「どうしてだ?」

「家庭科の課題」

 そういえばそんなものがあった。学校の家庭科の課題として、自分の親・姉弟を手伝え、といったものがあった。無かったら家事でも大丈夫だ、と先生は言っていたが、美香姉は百合姉のカフェに行こう、と決めたのだろう。

 愛理姉は先に帰ってしまったため、美香姉とは二人きりである。愛理姉には悪いけど、百合姉のカフェで少し働かせてもらおう。希さんも元気にしてるかな。そう言えば、会うのは結構久しぶりな気がするなぁ。

「……将?」

 急に美香姉が俺の顔を覗きこんできた。す、すいません。




 数日後、百合姉の店のお手伝いになることが決まった。美香姉はレジ打ちで、俺はどうやら裏方での力仕事とかになるらしい。百合姉の人使いは荒い物だと痛感させられた。だが、嫌ではない自分もいて。

 それもそうで、裏方とはいえど、たまに希さんとお話が出来るのだ。百合姉とも出来るが、久しぶりに希さんと話すため、彼女との会話は楽しみである。

 裏方で段ボールを空ける仕事をしていると、希さんがやってきた。

「あ、将さん」

「希さんですか」

「……おつかれさまです」

 そのまま希さんはピューと走り去ってしまう。ちらと真っ赤な顔も見えた。前からの恥ずかしがり屋は全く治っていないらしい。だとしたら何故接客業についているのか疑問ではあるが、あえて突っ込まないことにする。

 サンドイッチの食材が入った段ボールを開けていると、今度は百合姉がやって来た。何だがご立腹の様である。俺何か悪い事しましたか。

「……ゆ、百合姉?」

「何だか希の様子がおかしいのよね」

「希さんは恥ずかしがり屋だからな」

「いい?」

 急に百合姉は俺に顔に近くに人差し指を立てると、囁くように小さな声で俺に言う。鋭い目に捕らえられてしまい、体全体の動きが止まる。

「仕事をするんだったらきちんとしなさい。……それとも、希といちゃいちゃしに来たのかしら?」

「い、いや、そんなつもりはまったく」

「まぁ、客はあまり来ないと思うけれど、分かってるでしょ?」

 そう言って百合姉は去っていく。流石店長、言葉の重みが全然違う。そして、希さんとお話があまりできないように釘を刺されてしまった。そこのところもやはり百合姉は抜け目がない。最後の「分かってるでしょ?」が気になるけど。

 サンドイッチの材料が足りない、と百合姉の声が飛んできたので、段ボールごと抱えて声のした方へ走った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ