焼き鳥と姉 1
姉さんたちが部屋に戻った頃、俺と愛理姉はまだ居間でごろごろしていた。夜になっても特にすることなく、愛理姉も仕事を終わらせてしまったのでお互い暇である。美香姉は理子姉とつるみに行って、百合姉は仕事疲れで倒れてしまったのだ。
「愛理姉、焼き鳥屋に行く?」
「焼き鳥屋? 千秋さんの?」
「うん」
「そうだね……お腹空いたから行こっか」
愛理姉は自分の財布を覗きながらつぶやいた。
千秋さんの焼き鳥屋にて、俺と愛理姉はカウンターを向かいに座っていた。辺りにはたれの匂いが漂っていて、愛理姉はカルピスを飲みながら焼き鳥が出てくるのを待っている。向かいで焼き鳥を焼いている千秋さんが俺の手元にコーラを出した。
「今日は百合も理子もいないのか」
「二人とも忙しくて来られなかったそうです」
「……本当か?」
千秋さんの片眉が上がった。俺と愛理姉は一瞬固まり、千秋さんはその一瞬を見逃さなかった。口の端で笑った後、手元の焼き鳥をくるっとひっくり返した。俺と愛理姉はうつむいて無言になってしまう。少しの間、辺りは車の音だけがしていた。
鶏肉の焼け具合を見ながら、千秋さんは思い出したようにつぶやく。
「何も聞いていないけど、かわたれでいいか?」
「もう焼いちゃってるじゃないですか」
「だから聞いてる」
「……かわたれで」
愛理姉はお財布の中身を見た後、心配そうにこちらを見つめてきた。俺のズボンのポケットの辺りをぽんぽん叩くと、愛理姉はこくっとうなずいてまた焼き鳥に目を戻す。
しかし、千秋さんはやはりスタイルが良い。彼女は今黒のタンクトップを着ていて、腰にはさっきまで着ていたのであろう、上半身の白ジャージを巻いていた。タンクトップに浮き出ている胸のライン、引き締まった腰、そして露わになっている二の腕。体の一部分一部分に見とれてしまい、既に焼き鳥が出来ていたことに気付かなかった。
慌てて焼き鳥を受け取ると、千秋さんは不機嫌そうにつぶやく。
「早く食え」
「す、すいませんでした」




