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強引な姉 2

 縛られるのは俺ではなかった。

 唐突に何を言っているんだと思ったかもしれないが、そうである。実際に縛られるのは百合姉で、じゃあ俺は安心できる、と思っていたが、そうはさせてくれなかった。

 百合姉は黒の下着姿になり、その状態で自分自身を縛りつけたのだ。こちらには動くことの出来ない百合姉の身体がほいっと用意され、こちらの出方をうかがってくる。下手したら他の人に見られるかもしれないから、俺もヒヤヒヤだ。

「あーん、弟に縛られたぁ」

「百合姉静かにしてぇ」

「だめぇ……ほどこうとしたらどんどん強くなってきちゃう……ああぁ」

 百合姉の官能的な声が車内に響く。頭から理性の五割が吹っ飛んでしまい、残った理性で俺は頭をガラス窓にぶつけ、何とか現実を見ることに成功する。だが、横の百合姉はまるで「見てください」とも言っているかのように声を上げてしまっていた。これはほどかねば。ほどかないと俺が百合姉を縛りつけて楽しんでいるように見えてしまう。

「百合姉、何やってんだよ、ほどくからじっとしてて」

「じっとしてるわよ。あんっ、もっと締め付けちゃだめぇ」

 百合姉の谷間にロープが思い切り食い込んだ。ぐ、たわわな果実二つが俺の二の腕に。落ち着くんだ俺。ここは家じゃない。もし何かあったら家族会議どころじゃすまなくなっちまうんだ。そうだ、落ち着くんだ。素数を数えよう。1、1、2、3、5……あれ?

「このままじゃお姉ちゃん襲われちゃう……いぃぃぅ、そこ、いいぃ!」

「静かにしてろ!」

「……計画通り」

 百合姉のロープをほどき終わった直後だった。ほどいたはずのロープが百合姉の手に渡り、それがたちまち俺を縛りつけてしまう。百合姉の不敵な笑顔に気付いた時はもう遅く、倒れた助席に俺と百合姉は一緒に横になった。一切の主導権を彼女に握られてしまった俺は、まるで飼っている犬を撫でるような目つきをしている百合姉の言う事を聞くしかなかった。

「可愛いわね……食べちゃいたいくらい」

「た、たすけ」

「私の下着姿をそんなに見てもらいたいのね。人を巻き込むなんて最低な男」

 罵られているはずなのに、罵られているはずなのに嫌ではないとはどういう事なんだ。百合姉の目に答えを求めてみるが、そこに映っているのは「変態さん」というメッセージである。黒い下着が彼女を女王様っぽく見せていて、逆らおうにも逆らえない。

 じっとしていると、百合姉は頬をペロリとなめてきた。




 狭い車の中だから、俺と百合姉は密着せざるを得ない。車内は百合姉の汗の匂いと二人分の熱気のおかげで少し蒸し暑くなって、艶美な雰囲気が俺の理性を破壊しようとする。

 このまま行く所まで行っちゃうかと思っていたら、百合姉が服を着始めた。慌てて周りを見渡すが、特に誰か来た様子ではない。

「将、ちょっと付き合ってもらうわよ」

「え?」

 百合姉は服を着ると、俺を縛っているロープをほどいた。そして、どこからか取り出した手錠で俺の右手と百合姉の左手をがっしりと固定してしまった。

「ゆ、百合姉、どこに」

 百合姉は車のドアを開けて言った。

「買い物よ」


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