ハイテンションな姉 後編 1
夜の事だった。寝ている俺の隣に愛理姉が入って来る。
「……?」
「将君。たまには、一緒に寝てくれる?」
「……構わないけど」
愛理姉は布団に入ると、俺にそっと抱きついてきた。
……おい。まさかだが、服は着てるんだよな? 愛理姉。
何だか危ない気がするぞ。これ。大丈夫なのか?
「寝れないのか?」
「……将君の隣にいると、何だか落ち着く」
「そうか?」
一方、他の布団で美香姉たちは眠っている。
愛理姉は俺を、さらに胸元へ引き寄せた。
……素肌が当たってる? 愛理姉、服は着てるのか?
「将君……」
愛理姉は、俺の胸に飛び込んでいる。
よく見ると……浴衣が緩いぞ。肩が出てる。……っておい!
何だこのシチュエーションは。どこかのゲームか。
「将君。……見たいの?」
「お、おい。どうしちまったんだよ」
愛理姉、百合姉に感化されちまったのか?
愛理姉はそう考えている俺の頬にキスをしてくる。
「こうしてると、何だか夫婦みたいだね」
「そ、そんな事言うな」
だが、愛理姉の目はどこか遠い所を見ていた。
何だか、とても悲しそうな顔をしているように見える。
「愛理姉。何したいんだ?」
「私……こうしたい」
愛理姉は、俺に顔を近付けてくる。
……っておい。これ、完全にキスの流れじゃないか?
「ちょ、愛理姉」
「お願い。もう、我慢できないの」
「それは私もよ」
布団の中から、声と共に百合姉が出てきた。
「百合姉!?」
「一人だけぬけがけなんてずるいわよ。愛理」
な、なんだぁ。この光景は。
どちらも、浴衣を半分脱いでいる状態なのだ。
いやでも緊張して、体中ががちがちに固まってしまう。
「あわわ」
「将君……」
何があったかはよく覚えてない。
朝起きたら、俺は百合姉と愛理姉に抱かれていた。
「……」
左腕を愛理姉、右腕を百合姉に抱きしめられている。
たまに百合姉の吐息が耳にかかるのが、少しくすぐったい。
というより、これは何とかならんのか。いつもの事だから仕方ないが。
「……」
足に、何かがくっついてきた。
よく見ると、美香姉と理子姉がそこにはいる。
「あの……起き上がれないんですが」
「将君は寝たままでいいの」
いつの間にか起きていた愛理姉は、俺にそっと言った。
……身動きが取れん。
「朝ごはんはどうするんだ?」
「どこかに食べに行くって。心配しなくていいよ」
愛理姉は、とても優しい口調で言った。
その笑顔が、今の俺にはものすごくまぶしく見える。
「んぐ……」
右足の方で、理子姉が起きたらしい。
理子姉は浴衣を整えると、三人に抱きつかれている俺を見た。
「将君。起きなきゃダメ」
理子姉は、俺から百合姉、愛理姉、美香姉を引き剥がした。
ふぅ。やっと起き上がれる。
「今日はお外で食べるわよ。将君もさっさと準備しちゃいなさい」
「わかった」
俺はまだ眠っている3人を置いて、着替えを持ちトイレへと行った。