出し抜かれる姉 3
なぎささんと二人きりで車に揺られること数十分。俺たちはある温泉までやってきていた。着替えを持ってこい、と言ったのはそういう事だったのか、と思っていると、なぎささんはエンジンを止め、車から降りる前に俺の方を見る。
「……将さんとは混浴が良かったんですが、まだそれは早いかなって」
「そ、そうですね。まだなぎささんとは付き合いも短いですし……」
「だから、ちょっとずつ将さんの心に寄り添っていきたいんです」
俺の手を握り、なぎささんは優しい声でつぶやいた。彼女の長髪が俺の手の甲をくすぐり、そこからはほんのりとシャンプーの匂いが漂ってくる。そして、首筋からは汗の匂いもした。女の人の身体ってこんなに良い匂いなのか、と思っていると、彼女は車から出た。
温泉は分浴。普通通りのはずだが百合姉たちと行くと決まって混浴であるため、かえってこっちの方が新鮮だ。一人貸し切りで露天風呂につかっていると、隣からなぎささんの声が聞こえてくる。
「将さんいます?」
「一人だけですよ」
「こっちも」
竹の壁一枚でしきられた向こうからなぎささんの声が聞こえてきた。彼女の姿が見えないことが想像欲を掻き立て、俺は口元を少し緩ませてしまう。バスタオルを巻いているのか、巻いていないのか。巻いていなかったら、なぎささんの身体はどんな感じで……
「将さんの顔が見えないのが寂しいです」
「こっちも、なぎささんの姿が見られないのが」
「私の身体が見たかったんですか?」
「ち、ちがっ」
壁越しから聞こえる笑い声に、俺はうつむいて顔を赤くした。隣になぎささんがいるという事を考えるだけでも俺はどうしようもなく興奮してしまう。姉さんたちと混浴は何回か経験しているから分浴は大丈夫だろう、と高をくくっていたが、姿が見えないということによる想像はそんな俺を見事に撃沈寸前まで追い込んだ。
なぎささんのスタイルは服越しに見ても悪くはない。理子姉と大体同じくらいだと予想して、胸のサイズ、ウエスト、ヒップは大体あんな感じで……そしてもし彼女が隣にいたとしたら、彼女は俺の方へ寄って来てなでなでを……
「……将さん?」
「……うぇっ!?」
「のぼせたんだったら上がりますか?」
俺はそれに素直に返事をした。湯船にのぼせたんじゃない。このまま露天風呂に入っていたら、俺はこのまま妄想の中に引き込まれてそれでのぼせてしまうからだ。




