飲んだくれる姉 4(終)
「将は真ん中ね」
「俺は入れるのか?」
「入りたかったら、な」
今更ここで引き返すわけにもいかず、俺は百合姉と千秋さんの間に入った。入るとすぐに二人から抱き着かれてしまい、その場で動けなくなる羽目に。俺の右側を百合姉の身体が、左側を千秋さんの身体が包み込んでいる。
興奮と共に、何だか大きな何かに包み込まれているような安心感も覚えた。千秋さんは俺の顔に触れると、口を寄せてそっと頬にキスをする。
「千秋だけずるいわよ」
そう言って百合姉もキスをしてきた。酒の匂いが辺りを漂う。百合姉は赤くなった顔で俺を抱きしめると、そのまま満足そうに眠ってしまった。千秋さんの方に目を向けると、彼女はこちらに微笑み返してくれる。
千秋さんは俺と百合姉を見ると、小さな声で言った。
「……姉弟関係の中に私が入るのは、少しお邪魔かな?」
「そ、そんなことありませんよ」
「ならいいんだ……すまん、当然のことだったか」
千秋さんは微笑むと、百合姉に抱かれている俺をさらに抱いた。喧嘩で鍛えられたのか、彼女の腕には細い筋肉がきちんと張っている。鋭い眼差しで見られると俺は目を離せなくなってしまい、千秋さんのペースに持っていかれてしまう。
俺の首筋に顔を近づけて匂いを嗅いできた。どうも俺の匂いは良い匂いらしく、千秋さんは嗅いで数秒でへろへろになってしまう。そしてそのまま、百合姉と同じく夢の中へと旅立っていった。
2人の身体のやわらかさを感じていた俺にも一日の疲れが押し寄せてきて、眠りについた。
次の日、千秋さんからメールが届いた。姉さんたちに配慮して自分の部屋に一人でいるときに見ると、昨日の夜の事が書いてある。
――将の匂いはいつ嗅いでも最高だ。あと、良い抱き枕になったよ。
何だか恥ずかしいようなありがたいような気持ちになり、俺はその場で天井を見た。
「……千秋さんは綺麗な人なんだけどなぁ」
姉御肌で頼れるお姉さんだが、極度の匂いフェチであるところが残念だ。まぁ、だから俺が千秋さんに何度も会えるんですけどね。毎日千秋さんの身体に包まれたいけれど、さすがに毎日一緒にいると姉さんたちが拗ねてしまう。
一週間に一回くらいになるのかな。あぁ、何だか千秋さんに会いたくなってきた。




