音楽家な姉 1
最近お姉ちゃんの添い寝ボイスの動画を漁っています。
理子姉に怒られたのか、それでパソコンが一回ダウンしました。
理子姉は休日、自分の部屋で作曲をしている。部屋の外にギター音やシンセサイザーの音が聞こえてくるため、新曲を聴くことも出来る。夜中にふと、理子姉がどうやって作曲しているのかが気になり、理子姉の部屋をノックする。
「いいよー」
向こうからそう返ってきたため、俺は中に入る。理子姉は俺だという事に気付くと少し驚くが、またいつものように作曲に戻った。部屋にはギターの軽快な音が響く。
「理子姉、いつもそうやって作曲してるの?」
「そうだね。私は楽器を使ってるよ。他の人はパソコンとか使ってるらしいけど、私はこうやって楽器自体の音を聞くのが好きなんだ」
微笑みながら答えてくれた理子姉はとても綺麗だった。白く長い指がアコースティックギターの弦を弾いて和音を奏でる。俺が理子姉のギターをずっと聞いていると、理子姉はふと何かを思いついたようにCD棚の中を漁り始めた。
「何探してるの?」
「えーっと、確か……あった、これだよ、将君」
理子姉が取り出したのは、俺が生まれるずっと前の曲。サイモン&ガーファンクルの「スカボローフェア」が入ったCDだった。一度聞いたことがあるが、俺は眠くなってしまった記憶がある。それをCDプレイヤーに入れると、スピーカーからは綺麗な男声のハーモニーが聞こえてきた。
「……綺麗だな」
「そうでしょ。私、この人たちのバラード好きなんだ」
言葉では表せないような不思議な世界に引きずられていると、曲は終わっていた。理子姉はCDプレイヤーからCDを取り出し、それを元の場所にしまうと、今度は自分がギターを持った。
「将君。眠くなったら寝てもいいからね?」
「いや、大丈夫だよ。理子姉の演奏だから」
「ありがとうね。……じゃあ、いくよ」
理子姉は息を整えると、アコースティックギターを奏で始めた。優しい音色が部屋中に響き、それに理子姉の歌声も合わさる。
Are you going to Scarborough Fair?
Parsley, sage, rosemary, and thyme
Remember me to one who lives there
He once was a true love of mine




