体育着と姉 6(終)
眠くなってきたので布団に入って考えていると、布団の下の辺りがもぞもぞとし始める。
「……誰だ?」
「……あっ」
俺の足元から出てきたのは、体育着姿の愛理姉だった。俺の胸元には愛理姉のやわらかい胸がもにゅっと当たり、愛理姉の白くて細い腕が俺の身体を包み込む。少々汗をかいていたのか、愛理姉の匂いもこちらへ漂ってきた。
愛理姉の上目づかいが俺の視線をがんじがらめにする。かわいさと色気、そして汗の匂いが俺の理性を粉々にしようとしていた。が、俺は寸前で踏みとどまる。
「……愛理姉?」
「……将君、今日の体育でずっと私の事見てたでしょ?」
「う」
はっきりと言い当てられてしまい、俺は少し目線をそらした。バスケットの試合も少しは見ていたが、体育の授業の記憶は愛理姉の事しかない。健一と少し話をしたような気もしたが、それでも愛理姉の姿が一番脳に焼き付いていた。
「将君、体育着姿の私が好きなんでしょ?」
「……あ、ああ」
「やっぱりそうだと思ってたけどね」
愛理姉はうつむくと、俺の身体に寄り添うようにくっついた。「体育着姿の愛理姉」が好きだ、と伝わってしまったのかもしれない。俺は誤解を解くべく、愛理姉を優しく抱きながらつぶやく。
「……いつもの愛理姉も可愛いよ」
「へっ!?」
愛理姉は体をビクンとさせると、少しぼうっとしたような顔で俺の方を見てきた。体育着姿限定ではないことが伝わってよかった。台所でのエプロン姿も十分に破壊兵器なんですがね。そう思っていると、愛理姉は頭の位置を俺と合わせた。
「将君」
「何だ?」
「……お姉ちゃんの匂いーっ!」
「おわぁっ!?」
愛理姉が急に、身をむくっとあげて俺を胸元にうずめさせた。顔には愛理姉のやわらかいお山の感触が来て、思わず目を細めてほっこりとしてしまう。それに、女子特有の汗の匂いが混じり、俺は一層愛理姉に寄り添ってしまう。体が柔らかいから、なおさらだ。
しばらくこうやっていると、睡魔が俺と愛理姉を同時に襲ってきた。愛理姉は俺を胸元にうずめさせたまま、俺は愛理姉の柔らかくて大きな胸に顔をうずめたまま、眠りに落ちていった。
翌日、ここ最近で最高の目覚めとなった。こんなによく眠れた日はない程に体が元気になっていて、隣の愛理姉も同じようだ。愛理姉と俺は部屋から出る前に軽くキスをすると、その場で強く抱き合う。愛理姉は、やはりいつ見ても可愛い。
愛理姉と別れた後俺は制服に着替えるが、時計を見て気づく。まだ五時だ。
「……結構早起きしちゃったな」
いつもはぐっすりと寝ているのだが、今日は愛理姉の生活と時間が合っている。愛理姉の朝食準備でも手伝おうか。そう思って台所に行くと、愛理姉が炊飯器とにらめっこしていた。
「あ、将君」
「愛理姉、手伝おうか?」
俺がそう言うと、愛理姉は笑顔になってうん、と答えてくれた。その後に、一言付け加えるような形で俺に言ってくる。
「お姉ちゃんの体育着姿、見たいんだったら家で言ってね? 授業中見ちゃダメだよ?」
次は理子姉とのお話です。順調にいけば日曜日に更新予定。




