表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/375

旅行する姉 6(終)

 お土産の黒饅頭を持ち、俺たちは帰りの電車に乗っていた。電車はピークの時期を過ぎたのか少し空きが出来ている。右隣の美香姉は何だか物足りなさそうだ。

「……どうしたんだ?」

「……本当は、ずっと将と二人でいたい」

 美香姉の本心が漏れたような気がした。たった一言だけなのに、その一言が俺の気持ちを揺さぶってくる。美香姉の訴えてくるような目もそれを加速させる。

 俺はただ、こうして美香姉の左手を握る事しか出来なかった。

「将?」

「……少し、考え事してた」

「……そう」

 美香姉は今の俺をどう思っているのか。手を握る事しかできないような腰抜けには思われたくはない。電車に人はあまりいないとはいえ、ここでのあれはやはり目立つ。そんな状況の中、美香姉は誰も見ていない隙をついて俺の頬にキスをした。

「……美香姉」

「……」

 美香姉はうつむいた。

 もうすぐ、目的の駅に着く。理子姉が迎えに来てくれるだろう。


 こんなに悲しい後味を残す旅行は初めてだった。

 理子姉に会えて美香姉は少しうれしそうだったが、やはりどこか悲しい雰囲気を漂わせている。理子姉もそれを読み取ったのか、話を俺に振ってきた。

「美香ちゃん、何だかまだいろいろしたかったんじゃないの?」

「……だな」

「……将と二人きりがよかった」

 理子姉は少し悲しそうな顔をするが、美香姉の持つ黒饅頭をちらと見た後に言う。

「家に帰ってからも、将君と二人きりになれるよ。寝る時とか、学校に行く時とか」

 それを聞いた美香姉の顔が、ほんの少しだけ明るくなったように見えた。美香姉は軽く微笑むと、買ってきた黒饅頭を大切そうに撫でる。

 そうだ。美香姉とは、また二人きりになれる。一緒に寝ることだって、学校で話すことだってできる。それに、愛理姉たちもそろそろ拗ねる頃だろう。

「ほら、もうすぐ家だよ」

「……うん」

 そう答えた美香姉の笑顔は俺も笑顔にしてくれた。


美香姉かわいいよ美香姉

日曜日からは愛理姉のお話を更新する予定です。

お楽しみなのです。(`・ω・´)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ