表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
178/375

旅行する姉 5

 夜は涼しい。昼もそんなに暑いわけではなかったが、夜風に当たるのは気持ちがいい。美香姉と俺は縁側に座ると、星空と木々を交互に見ていた。

「綺麗だね」

「ああ」

「……こうしてると、ずっと一緒にいるみたいに思う」

 急に美香姉らしくない言葉が出てきて俺は戸惑うが、すぐにその言葉の意味を掴み取った。俺は星空を見ながら、美香姉の右手をそっと左手で包み込む。

「先のこと言ってもどうにもならないだろ」

「……うん」

 俺と美香姉は満天の星空のもと、ディープキスを交わした。誰にも邪魔されない至高の時間を、お互いを求めあいながら過ごした。


 寝てしまえば朝は早いもので、まだ美香姉と一緒にこうしていたいのに、窓から差し込む光が俺と美香姉の顔を照らしてしまう。ぼんやりとした意識の中で、美香姉がこっちを眠そうな目で見ているのが見えた。その姿を見つめていると、美香姉がキスをしてくる。

「……おはようのキス」

「美香姉……ううん、美香」

 美香姉の身体はまだだるそうだ。襲おうと思えば簡単に襲えるのかもしれない。だが、そんなことを俺の身体が許すはずなどなかった。だが、頭は美香姉を襲ってしまえ、と体に何度も命じてくる。その間で揺れ動いていると、美香姉の方が俺を襲ってきた。

 俺は美香姉にペースを持っていかれてしまい、動けなくなる。まだ体が重い。

「将。一つ、いい?」

「何だ?」

「……家に帰っても、昨日と今日の事、忘れないで」

 美香姉の声は切実そのものだった。

 家に帰れば愛理姉、理子姉、百合姉が待っている。千秋さんたちとの生活も再び始まるだろう。だが、美香姉とのこの日々は終わってしまう。二人きりだった日々も。

 そう思うと何だか悲しくなってしまい、俺は美香姉の目を見つめる。きっと、こうやって無言の意思疎通を図ることも少なくなっていくのだろう。そう考えている間に、美香姉は布団から起き上がった。

「……出て行くのは9時だから、あと少し」

「……そうだな」

 いろいろと名残惜しい気持ちもあるが、楽しい日々にはいつか終わりが来る。それに、またこうして美香姉と一緒に旅行するのも悪くはない。そう思うと少し心が晴れた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ