旅行する姉 5
夜は涼しい。昼もそんなに暑いわけではなかったが、夜風に当たるのは気持ちがいい。美香姉と俺は縁側に座ると、星空と木々を交互に見ていた。
「綺麗だね」
「ああ」
「……こうしてると、ずっと一緒にいるみたいに思う」
急に美香姉らしくない言葉が出てきて俺は戸惑うが、すぐにその言葉の意味を掴み取った。俺は星空を見ながら、美香姉の右手をそっと左手で包み込む。
「先のこと言ってもどうにもならないだろ」
「……うん」
俺と美香姉は満天の星空のもと、ディープキスを交わした。誰にも邪魔されない至高の時間を、お互いを求めあいながら過ごした。
寝てしまえば朝は早いもので、まだ美香姉と一緒にこうしていたいのに、窓から差し込む光が俺と美香姉の顔を照らしてしまう。ぼんやりとした意識の中で、美香姉がこっちを眠そうな目で見ているのが見えた。その姿を見つめていると、美香姉がキスをしてくる。
「……おはようのキス」
「美香姉……ううん、美香」
美香姉の身体はまだだるそうだ。襲おうと思えば簡単に襲えるのかもしれない。だが、そんなことを俺の身体が許すはずなどなかった。だが、頭は美香姉を襲ってしまえ、と体に何度も命じてくる。その間で揺れ動いていると、美香姉の方が俺を襲ってきた。
俺は美香姉にペースを持っていかれてしまい、動けなくなる。まだ体が重い。
「将。一つ、いい?」
「何だ?」
「……家に帰っても、昨日と今日の事、忘れないで」
美香姉の声は切実そのものだった。
家に帰れば愛理姉、理子姉、百合姉が待っている。千秋さんたちとの生活も再び始まるだろう。だが、美香姉とのこの日々は終わってしまう。二人きりだった日々も。
そう思うと何だか悲しくなってしまい、俺は美香姉の目を見つめる。きっと、こうやって無言の意思疎通を図ることも少なくなっていくのだろう。そう考えている間に、美香姉は布団から起き上がった。
「……出て行くのは9時だから、あと少し」
「……そうだな」
いろいろと名残惜しい気持ちもあるが、楽しい日々にはいつか終わりが来る。それに、またこうして美香姉と一緒に旅行するのも悪くはない。そう思うと少し心が晴れた。