表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
176/375

旅行する姉 3

 浴衣に着替え、温泉街に出た。辺りにおいしそうな料理の匂いが漂っていて、お腹がすいている俺と美香姉を誘ってきているようである。美香姉は俺の右手をつかむと、小声でこう言う。

「……帰るまでは『美香』って呼んで」

「……わかったよ、美香」

 少し驚いたが、俺はそうすることにした。まだ慣れないのか、美香姉の呼び方に俺は少し違和感を覚えてしまう。だが、慣れるだろう。

 しかし、美香と呼ぶなんて、恋人同士のようだ。いや、姉弟同士の恋愛はなかなか周りに受け入れられないから、こう呼ぶのもまた一興かもしれん。美香姉もそう思っているのあろう。

「……このお店」

「ここか?」

 美香姉が指差したのは、温泉街名物まんじゅうを売っている店であった。黒饅頭の前に美香姉の足が止まり、買って欲しそうに俺を見つめてくる。その純粋なかわいさに揺り動かされてしまい、俺はそれを買うことにする。だが、後でだ。

「帰りに買おうか。今買うと店に持っていかなきゃいけなくなるし」

「……うん」

 一旦黒饅頭とさよならをして、俺と美香姉は他の店を回ることにした。だが、なかなか店内に入って食べるような店はない。だが、その代わり片手で食べられるような物が温泉街には充実している。この肉屋もそうであった。

 俺は二人分のあつあつコロッケを頼み、待っていた美香姉に片方を手渡してあげる。一口食べるとともに熱さで顔をしかめる美香姉。それを見ながら食べていると俺もそうなってしまった。頬が熱い。

「……熱かった」

「出来立てだからな」

 コロッケの他にも、近くにはたこ焼きなどがあった。ファストフードで腹を満たすのもまた悪くはない。美香姉と一緒だからなおさらだ。今は二人きりでいたい。

「それじゃあ、美香。たこ焼き買って旅館に戻るか。黒饅頭もな」

「うんっ」

 美香姉の嬉しそうな声で、俺はまた笑顔になれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ