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悪魔世界の特別公演 12

 夜、俺は一人で千秋さんのお店に行っていた。理子姉たちはみんな潰れてしまったのだ。

 という訳でコーラを飲みながら、千秋さんと俺は駄弁っている。

「そりゃ大変だったな」

「まさかあんなにギター上手だとは思いませんでしたからねぇ」

「あー、ハービィ、だっけか。なんかそんな人聞いたことある」

「誰ですか?」

 千秋さんが少し悩んだ後、こう答える。

「確か昔、メガデスていう所にいたマーティ・フリードマンていうギタリストがいるんだ」

「それだ」

 最近英語の番組とかに出ているあのお人であった。なんか聞いたことあるなと思ってたんだよ。千秋さんナイスです。

「聞いた所リリィが連れにいたそうだけど、多分ジミヘンの名前を借りたんだろ」

「なるほど」

「ま、今更あーだこーだ言っても疲れは取れん。寝てってもいいぞ?」

 口の橋で笑う千秋さんがなんか怖い。襲われそうだ。そんな事を考えているうちに、俺が少し前に頼んだおかわりのコーラが来た。

「最近クーラーボックスで4リットルは入れてるけど、どっかの誰かのせいですぐなくなるんだよな」

「すいませんでした」


 翌日、百合姉のカフェに行くとお客さんの中になぎささんの姿があった。とは言うが、お客さんは俺となぎささんだけである。

「あ、将さん」

「お久しぶりです」

「うん。最近理子も休暇取ってるし、将さんと会える時間なかったからですからね」

 会える時間、と言った時何故かなぎささんははっとして顔を赤く染める。なんでだろ。

「久しぶりになぎささんに会えてうれしいですよ」

「もう、そんなこと言わないでください……」

「す、すいません」

「いいんです……」

 なぎささんのお顔が真っ赤である。何か取り乱していそうだが、なんとか戻ったようだ。

 そんなこんなしているうち、店員さんの希さんがやってくる。

「いらっしゃいませ……あ、将さん」

「お久しぶりです、希さん」

 ちらとなぎささんの方に目を向けると、何だか不服そうな顔をしている。希さんはそんなこと全く知らないのか、首をかしげて頭の上に?マークを浮かべてるぞ。俺も知らん。

「あ、コーヒー一つ」

「私も。今日は砂糖少しお願い」

「はい、わかりました」

 次は希さんが悲しそうな顔をちらと見せ、店の奥に行ってしまった。なぎささんの目が俺の目とふと会い、俺も照れくさい気持ちになってしまう。

 俺となぎささんの、二人きりだ。

「将さん」

「どうしたんですか?」

「実はその……私……」

 バッグの中に片手をもぞもぞさせながら何か言おうとするなぎささん。だが、この先が言うことが出来ないのか、ずっと口をうにうにさせたままである。かわええ。

「その……将さんと」

「コーヒー二つです」

 声のした方を向くと、そこには飛び切りの笑顔の希さんの姿があった。

 なぎささん、何かすごく悔しそう。


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