表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/375

夜型な姉 2

「……ん?」

その時、俺は百合姉の手から解放された。

神経を尖らせると、暗い部屋で何かがもみくちゃになる音が聞こえてきた。

「将君は私のもの!」

「姉の言う事は聞きなさい!」

「そういうお姉ちゃんだって独り占めしようとして!」

俺は慌てて立ち上がり、部屋の明かりをつける。

するとそこでは、百合姉と愛理姉が顔を鬼のようにして向き合っていた。

しかも、愛理姉は包丁、百合姉は鞭を持っている。

「ふ、二人とも。落ち着いて!」

「……将君。将君は、どっちが好き?」

愛理姉はいつもよりも低い声でつぶやいた。

その向かいにいる百合姉が持つ鞭の柄に、少してかりが見える。

百合姉の手汗がやばい。状態を良くしようと、俺は恐る恐るつぶやいた。

「俺は……どっちも」

選んだ言葉が正しかったのか、二人とも笑顔になった。

俺に二人とも抱きついてきて、うにゅーとか何か変な声を出す。

百合姉はいつもの妖しげな笑顔に戻り、俺の頭をなでなでした。

「……愛理。独り占めしようとして、ごめんね」

「私も、何だかカッとなっちゃたみたい。ごめん」

何はともかく、まあ二人は仲直りしたのだろう。

普通の状態に戻った愛理姉は百合姉に言う。

「今日は、私はもう寝るわ。あとは百合姉の好きなようにして」

「ありがとう。愛理」

……ちょっと待て。それはつまり、俺が百合姉に何かされるという事か?

それに対して何も言わない愛理姉は、去る時一言だけ残す。

「将君のファーストキスは、いつか私が奪うから」

「何を」

また二人の眼の間で火花が散った。

意地悪そうに笑った愛理姉は、百合姉の部屋から消えた。

それを見た百合姉は鼻で笑うと、俺を再びベッドに倒す。

「お姉ちゃんが、夜の楽しみ方を教えてあげる」

「百合姉……ちょっと待ってくれよ」

「待たない。だって、もう待てないから」

百合姉は、色気満タンの目で俺を見た。

う、動けないだと!? 何だこの眼力は!?

「将君の腕、すらっとしていて綺麗ね」

俺の腕を覗き込んでいる百合姉は、わざとかどうかはわからない。

服の隙間から、胸の谷間が見える。俺の目から数十センチのところで。

「こら。どこを見てたの?」

「い、いや、この体勢だと、しかたなく」

得意げに百合姉は、慌てている俺を抱いた。

これで、逃げ場が全て消えた。

「見たいなら、いくらでも見せてあげる。私の弟だもん」

俺の顔に、百合姉の胸が押し付けられた。

ちょ、息が……ふぅ。危ない危ない。しかも、すげーいい形してやがるし。

「将君と一緒に寝るの、夢みたい」

百合姉は俺を強く抱いて、頭をなでた。

他の姉ちゃんよりもなでなではうまく、少しくすぐったい。

「将君。私を抱いて?」

「ゆ、百合姉?」

「お願いだから……一回だけ」

百合姉の体のあらゆる所から、色気オーラが大量に発せられている。

何で百合姉は独身なんだろう。見る度にそう思うくらいだ。

職場はカフェらしい。隠れ場らしく、お客さんはあまりいないって聞いた。

……など、色々なことを考えていた。百合姉から気をそらすために。

だが、そこは百合姉。すぐに現実逃避している俺を引き戻す。

濃すぎるピンク色に染まった、現実世界に。

「将君を見てると私、だんだん興奮してきて……はぁはぁ」


――省略――(ご想像にお任せします)


朝起きると、俺は百合姉のベッドで倒れていた。

隣では百合姉が、俺の腕をがっしり掴んで離さない。

俺がさっきから百合姉から目をそむけている理由は、その服装だ。

昨日ああだったから、百合姉はシャツ一枚の姿になっている。

変に見てると、本当にヤバイ気を起こしちまいそうだ。全く。

「将君の……」

聞かない聞かない。寝言まで変なことをつぶやいている。

昨晩のあれは、夜の授業とでもいうべきのあれだろうか。

いや、だがしかし、されども、うーん、まあ。

百合姉は、俺に抱きついて来る以外に何もしてこなかった。

とりあえず、百合姉に本当に襲われるのは当分ないと見てよいだろう。

おかげで、ファーストキスを奪われる事も無く夜が過ぎてくれた。

そんなことを考えている間に、百合姉が起きる。

「……仕事」

あ、そっか。百合姉は今日カフェで仕事があるんだ。

俺は土曜日だったから、てっきり休みかと思ったが。

「行ってらっしゃい」

「将君、ちゃんと留守番してるのよ?」

「わかってるって」

百合姉が着替えを始めたと共に、俺は百合姉の部屋から出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ