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こっそりな姉 3(終)

 当然ながら、お化け屋敷の中は真っ暗である。

 俺の腕をしっかりとつかみながら、希さんは小さい歩幅でついてきていた。

 どこからかひろーっと飛んできたコンニャクが、希さんのほっぺにぺた。

「……ひゃぁぁぁぁ!」

「おわっ!?」

 叫び声で驚いていた俺は、気が付くと希さんに強く抱きしめられていた。

 少し寒く感じ始めていた所に、希さんの暖かい体がぎゅーっと押し付けられる。

 あ、いい匂い……お化け屋敷入って良かったかも。

「いやああああ……え、将さん?」

 俺が希さんの胸元でもごもごしていることに気付いたらしい。

 俺も希さんの背中へ腕を回すと、希さんは俺の顔をじっと見つめてきた。

 希さんの弱弱しい瞳が、俺から離れない。そうして、希さんの顔との距離が近くなった。

「希……さん?」

「……んっ」

 希さんの唇が、俺のとやさしくくっついた。

 戸惑う俺に、希さんの身体がふらーっと。暗闇の中、俺と希さんが地面で転がった。

 か、係員さんを呼ばないと……ずっとこうしていたいけれど。


「希……勝手にキスしちゃって悪い子なんだから」

「ど、どうするの?」

「後でお店でお仕置きしておくわ」

「なんか怖い言い方だね」

「愛理もされたいの?」

「ふぇっ!?」

「真っ暗だからあんなことも……」

「お、お姉ちゃん……ひゃぁ」


 希さんが途中でダウンしたため、車で迎えに来てもらうことになった。

 理子姉はあまり希さんと面識がないため、百合姉に来てもらうことになる。

 時間がかかるため、少し待つことになった。

「あの、将さん」

「何ですか?」

「その……今日は、迷惑かけてすいませんでした」

 希さんは、上目づかいで俺の事をじっと見つめていた。

 それがあまりにも可愛すぎて、俺は今にも襲い掛かってしまいそうである。自制。

「だ、大丈夫ですよ」

「私のせいで将さんに迷惑がかかったかと思うと……私……」

「いやそんな」

 キスしてもらえたので全部帳消しです。というより迷惑なってませんよ希さん。

 むしろもっとやってほしいような。俺何考えてんの。

「だから、今度恩返ししようかなって」

「恩返し?」

「その……将さんの……メイドになるというか……」

「め、メイド!?」

 開いた口がふさがらなかった。いろんな意味で。

 希さんがメイド……少し弱弱しくてご主人様に従順なメイドかぁ。いいなぁ。

「……ぷはぁ」

 あ、理性が。


 夜、食卓にて百合姉にその話をしていた。

「だそうです百合姉」

「希がメイドねぇ……ウェイトレスならいつもやってるから簡単だけど」

「希さんひょっとして押しに弱い?」

 俺の質問に、百合姉の片眉が上がった。

「何か強引にしたんじゃないでしょうね」

「いや、お化け屋敷の人の勧誘が断れていなかった」

 それを聞いた美香姉と理子姉が俺の方を向いて言う。

「……それ、将君とくっついていたってこと?」

「うん」

 理子姉と美香姉が無表情になった後、二人とも俺にとびかかってきた。

 寂しかったのはわかるから飛びかからないでぇ!


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