甘える姉 2
店の中で、理子姉は俺の事をじっと見つめていた。
店内にあまり人はいなく、少ないお客さんも静かにしてくれているので理子姉も楽だ。
おかげで変装も特にすることなく、いつも通りの服装である。
「やっぱりかわいいね」
「俺のことが?」
「うん」
そう言われると照れくさい。照れ隠しにうつむくのも、理子姉にはばれてるのだろう。
変に意識をするとこれまた照れくさい。コーラを一杯喉に流し込んだ。
「……ねえ、これ頼まない?」
「何をだ?」
「これ」
理子姉が指差したのは、期間限定メニューであるハートパスタとかいう物。
ハート型の器のパスタにハート型のソースがかかってくるらしい。なんでも、二人で完食すると幸せになれるんだとか。これ頼むのかよ理子姉。
「……」
「どうしたの?」
俺の顔を覗き込んでくる理子姉。
くっ、理子姉のおかげで理性が負けてしまった。仕方ない、頼もう。
「いくつ頼むんだ?」
「二人で一つ、でしょ?」
「あ、ああ」
俺が携帯電話で気をそらす間、理子姉は注文を済ませてしまった。
あれ、一通メールが来てる。なんだろう。
「メールが来てる」
「うん?」
「ちょっと待てな……」
百合姉と一緒のカフェで働いている、希さんからのメールだった。
将さんへ
一緒に働いている百合さんからあなたの事は聞いています。
店の常連さんとしても来てくださり、とても親しみやすい、という印象を受けました。
そこで、一度だけでいいのでお願いがあります。
実は、将さんと一回だけデートをしたいと思っています。お願いできるでしょうか。




