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隠していた姉 5

千秋さんはボロボロになったドアを見て、地面に唾を吐いた。

ジャージ姿ではなく、いかにも暴力団、というような白いコートを羽織っている。

後ろに立っていた残りの三人も、同じように白いコートを羽織っていた。

それはまるで白金のような輝きを見せ、その輝きは男たちを恐怖に陥れている。

「さぁ、腕に自信のあるやつからかかって来な」

「……うぉぉぉぉ!」

俺の周りの男うち、一人が千秋さんに向かって走り出した。

だが、パンチが千秋さんに届く前に千秋さんの右フックが男を横になぎ倒す。

周りの男たちは腰を抜かしたが、数で勝てると千秋さんたちに襲いかかった。

「相手は女だ! 一斉にかかれ!」

「忘れたのかい? 私たちはね……」

千秋さんの後ろに、三人が立った。

三人とも真剣な目つきで、向かってきた男たちをばったばったとなぎ倒していく。

数分のうちに、さっきまで俺の周りにいた男たちは全員地面にキスをしていた。

「最強の女軍団、白金組だよ!」

「白金組!? ……まさか、白金組は既に活動を止めたはずだ!」

その時、百合姉が口を開いた。

「私は白金組を解散する、とは一言も言ってないわよ。残念ね」

そう言って、百合姉は両腕の鎖を引きちぎった。

俺たちが茫然とする中、百合姉は俺の前に立つ。

俺も何とか立ち上がり、百合姉の後ろから男を見た。

「う、嘘だ……そんなの嘘だ!」

どこからか取り出したのか、男は銃を取り出して百合姉に向けた。

 百合姉が逃げれば、俺が死ぬって訳なのか?

「っはっは。どうする? お前が逃げれば愛しの弟が地獄行きだ!」

「……撃つなら、早く撃ちなさい?」

百合姉は手を伸ばすと、空手の時のような構えをとった。

周りの白金組の人たちは息をのみ、その様子を見守る。

「百合姉、百合姉が死ぬ!」

「静かにしてなさい。姉の言うことは聞くものよ」

男は馬鹿笑いしながら、銃のトリガーを引いた。

「死ねぇ!」

「くっ……!」

百合姉が、後ろに倒れた。

全てがスローモーションで動いているようだった。

俺の目の前に百合姉が倒れ、男はそれを見て狂喜の叫び声をあげる。

「あっはっはっはっは! 白金組の組長は弟を守って死んだ! あははは!」

「……てめぇ!」

俺は傷ついた体に鞭を打ち、男に向かって飛び蹴りをくらわした。

百合姉と過ごした思い出が頭の中を何回も流れていく。

初めて一緒に寝た夜。愛理姉との死闘、カフェでのエプロン姿。

倒れた男に向かって、何度も、何度もとどめの蹴りを与え続けた。

「お前なんか死んじまえ! 三回死んでもう一度死んで来い!」

怒りにまかせて蹴りを入れていると、男は既に動かなくなっていた。

俺は銃を遠くまで蹴り飛ばすと、倒れている百合姉の所へ駆けよる。

「百合姉!」

「組長!」

俺と白金組の人たちが集まり、百合姉の方を見た。

百合姉は目をつむって、動かない。

「……嘘だろ、おい!」

「組長! 死なないでください!」

「百合……」

千秋さんは百合姉の名前以外、何も言わない。

全員が悲しい雰囲気を出している中、百合姉の手が動いた。

「ゆ、百合姉!?」

百合姉の右手がゆっくりと開く。

そこには、一発の銃弾があった。

「勝手に、殺すな。弟の分際で」

「百合姉……百合姉!」

俺は百合姉に向き、周りの目など気にしないで強く抱き着いた。

百合姉は、銃弾掴みをやったのだ。

「……銃を使っても殺せない、か。噂の意味が分かった気がするよ」

千秋さんが小声でつぶやいた。

「金、どうしたらいいですか?」

俺が恐る恐るした質問に、千秋さんは微笑みながら答える。

「金はいいよ。組長助けるのはうちらの仕事だからな。……そうだ、将」

俺は千秋さんにある事を耳打ちされた。

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