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ドジな姉 3(終)

「将君。明日か明後日、理子姉が帰ってくるの分かる?」

「ああ。確か、福岡のライブから帰って来るんだよな」

愛理姉は耳打ちをしてきた。

「今日、ケーキ作るから。帰ってきた時みんなでお迎えしよ」

「……ああ」

脳裏に、炭の塊をトレイに乗せた愛理姉がよぎった。

愛理姉はなぜか、ケーキのスポンジは苦手だからな。

俺が来た時はたまたまうまくいったみたいだけど。

「何話してるの? 愛理」

百合姉が、うらやましそうに愛理姉を見た。

それに対して、愛理姉は何知らぬ顔で答える。

「別に。ただもう少しでお姉ちゃんが帰ってくるなぁ、て」

「嘘つかないの」

百合姉は敏感に感じ取り、少ししかめた顔で愛理姉に再び聞く。

「嘘ついていないよ」

「嘘ついてるわよ。何話したのか、ちゃんと言いなさい」

「……ごちそうさま」

美香姉が、席を立って自分の部屋へと行ってしまった。

愛理姉は観念したのか、下を向き、小さな声でつぶやく。

「……今日、ケーキ作ろうと思って」

「ケーキ……ちゃんと苺も作るのよ」

「はーい」

気の抜けた声で、愛理姉はつぶやく。

理子姉から聞いた話によると、あまり果物をケーキに入れたくないらしい。

百合姉とは全く逆の性格だな。うん。対立するわけだ。

愛理姉はゆっくりと台所へ向かった。


朝ごはんを食べ終わった俺が台所へ行くと、愛理姉は皿洗いを終えていた。

「あ、将君。これからケーキ作るんだけど」

「愛理姉……朝みたいに焦がさないでくれな」

「もういじめないでよ! 将君の意地悪!」

歩く戦闘兵器、と名づけたエプロン姿の愛理姉はふくれっ面になった。

……可愛いな。マズイ。意識が一瞬揺らいだぞ。

そして、ケーキの材料を取り出す。うわぁ、結構多い。

「今日は、百合姉の好きな苺ケーキと、理子姉の好きなチーズケーキ。将君にはチーズケーキを手伝ってもらうから」

「了解です、と」

愛理姉は前よりも慎重な手つきで苺を切り始めた。

包丁を使う手は震えている様だ。

「手、切るか心配だから俺がやるか?」

「えっ?」

愛理姉は、動きを止めてこっちを見た。

左手には、朝に切ったときの傷が残っている。

「……じゃあ、お願いするね」

愛理姉は俺に包丁を渡した。

「おう」

包丁で苺を切っている俺と、ケーキの元を混ぜる愛理姉。

何だか、横目に見ると愛理姉が新妻に見えた気がした。

……何を考えてるんだ。俺と愛理姉は姉弟じゃないか。

「愛理姉、いいお嫁さんになるんじゃないか?」

「そ、そんな事言わないでよ」

愛理姉は照れたのか、慌てて顔を他の方にそらした。

それから、将君の前だから、とかどうたらこうたらをつぶやき始める。

本当に、俺にとって女性を理解することは難しい。

「ほら。やるぞ」

「う、うん」

なぜか愛理姉は、包丁を使う俺をじっと見て顔を赤くしていた。

手、止まってますよ。おーい。

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