隠していた姉 1
第三期エンディングキャラクター決めるよ。
選択肢は以下の通り。美香姉は第二期エンディングなのでお休みです。
・ 愛理姉
・ 理子姉
・ 百合姉
・ 千秋さん
・ なぎささん
その日は朝からずっと雨が降り、視界は白く煙っていた。
俺と百合姉は相合傘状態で歩きながら、家へと戻ろうとしていた。
「……寒いわね、将」
「確かにな」
俺はさっきから、寒さ以外にも何か不気味なものを感じていた。
背中にずっと突き刺さっている、誰かの視線。
振り向いたら、そこには不良の一団が歩いているのが見えた。
目を合わせないように再び前を向くと、百合姉にこっそりと言う。
「後ろに不良がいる」
「そう……」
百合姉の顔から微笑みが消えた。
目つきはいきなり真剣なものになり、俺は少しだけ恐れおおのいてしまう。
後ろから足音が徐々に迫ってきていた。
「……将、走るわよ」
「えっ、ちょっと、百合ね」
最後まで言い切らないうちに、俺は百合姉に引っ張られて走り出していた。
後ろの不良たちも追いかけてきて、百合姉は俺を路地裏に引っ張り込む。
あちらこちら走り回り、俺たちは家の前についた。
「早く家の中に入りなさい」
「う、うん」
俺と百合姉は急いで家の中に入り、チェーンと鍵をかける。
百合姉の額には水滴が流れていた。それが雨水ではないことは、今の状況からわかる。
そして、窓を見るとさっきの不良が家の前を通り過ぎていくのが見えた。
「……行ったわね」
「百合姉、さっきのは?」
「聞かないで」
百合姉はそれだけを言うと、自分の部屋にさっさと戻って行ってしまった。
俺は玄関に取り残され、茫然と百合姉の背中を見つめるしかなかった。
夜、ご飯を食べ終わった後俺の部屋に百合姉がやって来た。
今日は寝間着姿だ。いつになく暗い顔で、百合姉は俺のベッドに座り込む。
「……将、一つだけ言いたいことがあるの」
「言いたいこと?」
百合姉は俺の目を見た後、訴えかけるように言った。
「お願いだから、不良とは絶対に問題を起こさないで頂戴」
「……わかった」
「約束だよ?」
「ああ」
俺は途端に眠くなり、その場で大きな欠伸をした。
百合姉はそれを見て、こっちに来るように手招きをしてくる。
俺はもう寝ることにして、百合姉の隣に座った。
「将。こうやって一緒に寝られるの、最後かもしれないわね」
「百合姉……縁起の悪いこと言うなよ」
「何でもないわ。今は将と一緒に寝られるだけで十分」
百合姉は俺を横から抱きかかえると、一気に俺ごと寝転がった。
百合姉の隣で俺は横になっていて、気が付いたら百合姉の顔がすぐそこにある。
艶のある青っぽい髪が、いつにも増して青白く光っていた。
「将……」
「百合姉……」
俺と百合姉は正面から抱き合うと、互いにキスをした。
それだけで時間は過ぎていき、俺の意識も徐々に遠ざかっていく。
目を覚ました時、百合姉の姿はなかった。
下に降りると、そこには慌てている愛理姉の姿が。
「愛理姉、どうしたんだ?」
「それが……」
愛理姉は顔を真っ青にしながら、俺のほうを向いて言った。
「百合姉がいなくなったの」
「えっ?」
一瞬聞き間違いかと思ったが、愛理姉の顔は青白いままだ。
俺の脳裏に昨日の不良たちの姿が思い浮かび、俺はその場で口が半開きになる。
足元が崩れ落ちていくような感覚で、その場でふらついてしまった。
「将君!」
「……愛理姉、ごめん」
俺は愛理姉の支えで立ち上がると、壁に手をついて昨日の事を思い出した。
昨日、俺と一緒に百合姉は眠りについたはずだ。そのはずなのに、何故今日百合姉がいなくなっていたのか。
「……」
「将君?」
愛理姉は俺の顔を覗き込んでくる。
そういえば、昨夜の百合姉の口調が、まるで人生で最後の会話のようだった。
俺との別れを惜しむような、自分にはやりたいことがあった、みたいな。
ベッドに入った時もいつものように激しくなく、俺を優しく見守ってくれていた。
「……愛理姉、百合姉って昔、何があったの?」
「何がって……?」
昨日の不良と何かがあったのは事実だ。
何か百合姉が悪いことをしていたようには思えないが、過去はどうだったのだろうか。
愛理姉は言い渋るような顔をしているが、俺は愛理姉をじっと見つめる。
「頼む。何でもいいから」
「……わかった。理子姉と美香ちゃんも呼んで」
「ああ」
俺はそう答えると、家の中をせわしなく走って行った。