表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/375

かんちがいする姉 3(終)

夕食の時、愛理は私の方をちらちらと見ていて挙動不審な状態だった。

将はさっきからその様子が目に映るようだが。心配そうに見る将は何かかっこいい。

今晩は愛理と過ごして、明日は将と一緒に寝ようか。

「百合姉、何か笑ってるけど、何かあったの?」

「何でもないわよ。理子」

理子はもぐもぐとご飯を食べながら、隣の美香と寄り添っている。

美香は最近理子にべっとりだ。ちっちゃいから何でも許せてしまうのがずるい。

「……理子姉、勉強後で教えて」

「いいよ。丁度次の歌詞考えたかったから」

「ありがとう」

向かいの愛理は、さっき私と一緒にいたせいか息遣いがいつもより荒かった。

何を想像しているのか、顔までほんのりと赤く染まってしまっている。これだから愛理は可愛いのだ。たとえおばさんから離れろと言われても、離れられるわけがない。

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさま」

私と愛理は大体同じタイミングでごちそうさまをすると、食卓から去っていった。



夜は更け、私は愛理と一緒に皿洗いの仕事をしていた。

早く皿洗いを終わらせて、愛理とベッドの中でガールズトークでもするのだ。

本当はもっと別の事をしたいのだけれど。……フフフ。

「愛理。今日は将といっぱい楽しんだの?」

「うん。いっぱいお菓子作ってきたんだ」

「お菓子?」

あれ、お菓子……? お菓子だったの?

「お菓子って、食べるほうの……」

「そうだけど、どうしたの?」

「じゃ、じゃあ、将が楽しんだのって……」

愛理は笑顔になると、私のほうを向いて元気に答えてくれた。

「うん。私とお菓子作り頑張ったんだよ!」

「そ、そうなんだ……」

腰の力が抜けていってしまうようだった。

今まで、私はいらない勘違いをしていたようだったのだ。

将も私を見限ったわけでなく、ただ愛理と一緒にお菓子教室に行っただけ。

思えば、それを聞いた時の私は妙に寝ぼけていた。

「……」

「……お姉ちゃん?」

「何でもないわ」

私はスポンジを握りしめ、皿の汚れ落としに再び専念した。

愛理は私の姿を見て、にっこりとほほ笑んでくれる。

その笑顔がいつの日か、私の生きる糧の一つになっていたんだ。

「お姉ちゃん、あと少しだから頑張ろうね」

「ええ」

私は残り少ない皿を持つと、丁寧に洗い始めた。



ベッドの中で、私は愛理と抱き合っていた。

この時間が私にとっての幸せであり、心が一番落ち着く時間でもある。

愛理は私の胸の中ですやすやと寝息を立ててしまい、寝顔をこっそりと見ることも。

「……」

無防備な愛理はやはり可愛かった。

将は彼女と寝るとき、いつもこの姿を見ているのだろうか。

愛理と将は、二人の性格からして一番相性がよさそうな気もする。

「お姉ちゃん……大好き」

「……フフッ」

寝言で愛理は急にそう漏らした。

私は愛理のおでこにこっそりとキスをすると、自分も目を閉じる。

そして腕の中に、愛理の弾力性のある体を抱きしめ、夢の世界へと堕ちていった。

夢の中で、愛理に会えればいいな。

私もあと、そんなに長くないかもしれないし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ