かんちがいする姉 3(終)
夕食の時、愛理は私の方をちらちらと見ていて挙動不審な状態だった。
将はさっきからその様子が目に映るようだが。心配そうに見る将は何かかっこいい。
今晩は愛理と過ごして、明日は将と一緒に寝ようか。
「百合姉、何か笑ってるけど、何かあったの?」
「何でもないわよ。理子」
理子はもぐもぐとご飯を食べながら、隣の美香と寄り添っている。
美香は最近理子にべっとりだ。ちっちゃいから何でも許せてしまうのがずるい。
「……理子姉、勉強後で教えて」
「いいよ。丁度次の歌詞考えたかったから」
「ありがとう」
向かいの愛理は、さっき私と一緒にいたせいか息遣いがいつもより荒かった。
何を想像しているのか、顔までほんのりと赤く染まってしまっている。これだから愛理は可愛いのだ。たとえおばさんから離れろと言われても、離れられるわけがない。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」
私と愛理は大体同じタイミングでごちそうさまをすると、食卓から去っていった。
夜は更け、私は愛理と一緒に皿洗いの仕事をしていた。
早く皿洗いを終わらせて、愛理とベッドの中でガールズトークでもするのだ。
本当はもっと別の事をしたいのだけれど。……フフフ。
「愛理。今日は将といっぱい楽しんだの?」
「うん。いっぱいお菓子作ってきたんだ」
「お菓子?」
あれ、お菓子……? お菓子だったの?
「お菓子って、食べるほうの……」
「そうだけど、どうしたの?」
「じゃ、じゃあ、将が楽しんだのって……」
愛理は笑顔になると、私のほうを向いて元気に答えてくれた。
「うん。私とお菓子作り頑張ったんだよ!」
「そ、そうなんだ……」
腰の力が抜けていってしまうようだった。
今まで、私はいらない勘違いをしていたようだったのだ。
将も私を見限ったわけでなく、ただ愛理と一緒にお菓子教室に行っただけ。
思えば、それを聞いた時の私は妙に寝ぼけていた。
「……」
「……お姉ちゃん?」
「何でもないわ」
私はスポンジを握りしめ、皿の汚れ落としに再び専念した。
愛理は私の姿を見て、にっこりとほほ笑んでくれる。
その笑顔がいつの日か、私の生きる糧の一つになっていたんだ。
「お姉ちゃん、あと少しだから頑張ろうね」
「ええ」
私は残り少ない皿を持つと、丁寧に洗い始めた。
ベッドの中で、私は愛理と抱き合っていた。
この時間が私にとっての幸せであり、心が一番落ち着く時間でもある。
愛理は私の胸の中ですやすやと寝息を立ててしまい、寝顔をこっそりと見ることも。
「……」
無防備な愛理はやはり可愛かった。
将は彼女と寝るとき、いつもこの姿を見ているのだろうか。
愛理と将は、二人の性格からして一番相性がよさそうな気もする。
「お姉ちゃん……大好き」
「……フフッ」
寝言で愛理は急にそう漏らした。
私は愛理のおでこにこっそりとキスをすると、自分も目を閉じる。
そして腕の中に、愛理の弾力性のある体を抱きしめ、夢の世界へと堕ちていった。
夢の中で、愛理に会えればいいな。
私もあと、そんなに長くないかもしれないし。