かんちがいする姉 1
「……ふぅ、やっと終わったか」
「楽しかったね、将君!」
「ああ」
俺と愛理姉はお菓子教室にて、クッキーのおいしい作り方を習ったのだ。
愛理姉はエプロン姿できゃっきゃとしていて、見ているこっちも微笑んでしまう。
そして、俺の右腕に抱き着いている姿がさらに愛おしかった。
「家に帰ろう?」
「だな」
愛理たちが帰ってくるのを携帯で聞き、私は家で一息をついた。
カフェの仕事が終わった後に飲むコーヒーはやっぱりおいしい。
「百合姉、例のあれ」
「棚の上よ」
「わかった」
美香ちゃんが棚の上に手を伸ばし、何か袋を持っていく。
私は机の横にうつぶせになり、そのまま目を閉じた。
「……姉、百合姉、起きて」
「んっ……」
私を呼ぶ声が聞こえてきた。
顔を上げると、そこには将と愛理の姿がある。
「おかえり」
「今日、将君と一緒に行ってきたんだ!」
逝って? ……いって、いって……はっ。
頭がまだぼうっとしているのか、どうしても変な方向に思考が飛んでしまう。
「あぁ、今日はどっか行くって言ってたからねぇ」
「それでね、将君とお菓子教室行ってきたんだ!」
犯し教室……? それってまさか……
「……愛理。冗談でも言っていいことと悪いことが」
「本当だよ! 将君楽しそうにしてたから!」
た、楽しそう……? 将と愛理が楽しそう……そんなっ。
私は愛理に先を越されたの!? 長女の私が?
「……」
「お姉ちゃん、どうしたの? 顔色悪いよ?」
「な、何でもないわ」
よく見ると、愛理がほんのりと顔を赤くしているような気がする。
やっぱり将としてきたのか。長女として今度叱らなければ。
将は義理とはいえ、一応弟なのだ。
「……私、なんか疲れてるみたいだから寝てくるわ」
「うんっ」
私は廊下を歩き、自分の部屋のドアを開けた。
中に入り、そのまま自分のベッドに倒れこむ。
「……将」
最近、将が私の事をかまってくれないような気がする。
理子や愛理、美香ちゃんたちと遊んでいて、長女の私には目を向けていないのだ。
考えすぎかもしれないが、私の事がもう好きではないのだろうか。
「寂しい……誰か構ってくれないかな……」
長女だから、みんなの前で簡単に弱音を吐くわけにはいかない。
ここはひとつ、愛理とでも一緒に寝て人恋しさを解消させないと。
口実は……あれにしましょう。
「……フフッ」