表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/375

真夜中の姉 2(終)

車の中で揺られながら、彼女はふと俺に聞いてくる。

「将さんって、理子さんの事が好きなんですか?」

何故その質問をするし。

姉に恋愛感情を抱く事が他の人に理解されるかは怪しいが、嘘はつけない。

俺はわざとぼかすようにつぶやいた。

「……まぁ、な」

「他に好きな人っています?」

「好きな人?」

運転しているなぎささんの声が、何故か少しだけ小さくなった。

理子姉は俺の隣で爆睡している。

「……姉さんたちか?」

「本当に、姉さん思いなんですね」

細々しい声が俺の耳に入った。

がっかりしているのか、それとも何か悲しい事があったのか。

「年上の女の人、興味ない?」

「年上? ……あぁ、姉さんたちとずっといるんであるかもしれません」

「ふぅん」

ちょっとだけご機嫌になったようだ。やはり女の心は理解が出来ない。

そろそろ家に着く頃か。

「……何か会った時のために、携帯のアドレス交換しておこう?」

「あ、いいですよ」

車の中で少し携帯をいじっていたら、車は家の前に止まった。

俺はベロベロになっている理子姉を車から抱えて出し、ドアを閉める。

車の窓が開いた。

「あ、ありがとうございました」

「何かあったらお願いね」

「はい」

車は俺と理子姉の前を走り去っていった。

理子姉はふと目を覚まし、俺にもたれかかっている事に気づく。

「……あれ、将君?」

「起きたか」

焼き鳥屋ではないことに気づいた理子姉が、俺の方をじっと見ている。

そしてそのまま俺にキスをしてきた。

「んうっ」

「うぅ……」

理子姉は俺の肩にもたれかかり、そのままうだうだとしてしまう。

俺は玄関のドアを開けて、理子姉を中に入れてあげた。

中から愛理姉が出てきて、理子姉の介抱をしてくれる。

「お姉ちゃんは私がやっておくね」

「頼むよ、愛理姉」

俺は愛理姉に理子姉の事を任せると、自分の部屋へと向かった。


次の日、携帯に新着メールが一通届いていた。

「……ん、なぎささんか」

件名は「今日の予定」。恋愛ゲームだとフラグがたちそうな感じである。

まぁマネージャーが本業だから違うとは思うけれど。

「えーっと……」

メールを開いて、俺は中身を見てみた。

〈今日は理子さんの写真集を出すため、午後に少しだけカメラマンと打ち合わせをします。場所は理子さんの姉の経営しているカフェなので、暇があれば来てみて下さい〉

理子姉が写真集を出すのか。興味深い話である。

そう思って読んでいると、下のほうでは空白欄が続いていた。

一番下までスクロールすると、そこにはたった一言の言葉が書いてある。

〈将さんとずっと一緒にいるなんて、理子さんがうらやましいです〉

俺の顔は真っ赤になっていた。

その瞬間ドアが開き、俺はメールを閉じる。

「……あれ、将君。顔真っ赤だよ?」

愛理姉だった。何故か安心感がある。

片手にフライパンを持っているということは、きっと朝ごはんなのだろう。

「朝ごはんか?」

「うん。今日は目玉焼きだよ」

「いつもありがとな」

「てへへ」

俺は愛理姉についていき、そのまま部屋から出た。

階段を下りながら、昨日のなぎささんと千秋さんの顔をふと思い出す。

「……」

今度、また会えるのかな。何故か脳裏にそのことが走っていった。

何で姉さんじゃないのに、こんなに彼女たちの事が気になるのだろうかね。

人間とは不思議な物だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ